「私は音楽的にもミックスカルチャーで育った影響を受けています。フィリピンでは妹と共にインターナショナルスクールの聖歌隊に入ったのですが、そこでは在校生の出身国に合わせて、フィリピンだけでなく中国や南アフリカなどいろんな言葉やメロディーの歌を歌ったんです。それがずいぶん影響していると思います。ラテンミュージックも好きですね」
《Every Second》はなぜかブラジルの人がよく聴いてくれたという。確かにボサノバの要素も感じられ、世界のどこにでも届くユニバーサル性が感じられる。若い女性らしく、恋の痛みを伴った歌詞もまた、世界で共感される理由だろう。
私の全てが入っている
最新シングル《Making Plans》は、来年発売予定のセカンドアルバムから先行して発表された。
「以前は心の中から自然に出てくるものをうまく楽曲に合わせて作ることができなかったのですが、今回のアルバムでは自然に合った感じがします。恋愛などロマンティックな要素はもちろん、家族のことなど私の全てが入っています」
コロナ禍では家に籠もる生活を送ったが、家族との親密な時間はそれまでの慌ただしい毎日では得難いものだったという。
今は日本に長期滞在して日本語を学びながら音楽活動を続ける。母方の祖母は《Every Second》の日本語バージョンを聴き、初めて孫がやっている音楽をよく理解してくれた。繊細な歌が多い孫のことを気遣い「リラックスする術を身につけなさいね」と言ってくれるのだと微笑んだ。
(ライター・千葉望)
※AERA 2024年12月16日号