ホリスティック医学では人間をまるごととらえるときに、体、心、生命の側面からとらえます。
体についてのマスクの弊害はこれまで述べた、呼吸の問題が中心になります。
では、心へのマスクの弊害はなんでしょうか。それは人と人のコミュニケーションが阻害されるということでしょう。「目は口ほどに物を言う」という言葉がありますが、やはり口の存在も大事です。マスク越しの会話では、本当の意味で心が通じ合えません。子どもたちのマスクも心配です。子どもは友だちと素顔で笑い合うことが、とても大事だと思うのです。
そして、生命へのマスクの弊害はなんでしょううか。それは生命エネルギーの源泉であるときめきにマイナスになるということです。
何に対してときめくかは、人それぞれです。私の場合は、晩酌、講演などの仕事、恋心が三大ときめきです。晩酌にマスクなど、もってのほかですね。酒のうまさが半減します。講演で聴衆がマスクをしているのもよくありません。熱気が伝わってこないのです。
そして恋心。私は女性の色気は鼻と口元にあると思っています。マスクをした女性には恋心がわきません。
帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中
※週刊朝日 2023年4月21日号