米大統領選の民主党予備選でヒラリー・クリントンと互角の闘いをくり広げたバーニー・サンダース。『バーニー・サンダース自伝』は彼が下院で唯一の無所属議員だった時代の自伝(『アメリカ下院のはぐれ者』1997年)に新しくまえがきと解説を加えた本である(原題は『ホワイトハウスのはぐれ者』2015年)。
 バーニーは41年、ニューヨーク州生まれ。64年にシカゴ大学を卒業し、72年のヴァーモント州の上院の特別選挙に自由連合党というミニ政党から出馬したのが政治家生活のスタートだった。得票率はわずか2パーセント。当時のヴァーモント州は、アメリカでもっとも共和党が強い保守的な州のひとつだったという。それがいまでは、社会主義者を名乗るバーニーが70パーセントの得票率で圧勝する州に変わった。その間に、いったい何があったのか。
 そりゃあジョン・レノンと同じ世代だもん、そんな政治家もいるさ、くらいに思っていたら、全然ちがった。急に有名になったみたいに見えるけど、本書からわかるのは、彼がここに至るまでには信じられないほど長く地道な闘いがあったという事実である。
 72年に落選した後、同年に州知事選に出馬して落選、74年の上院選でも落選、76年の州知事選でも落選。ここで一旦政治から離れるも、81年、無所属候補としてバーリントンの市長選に当選。
〈そこでの進歩的運動が、いかにこの市を、アメリカで最も刺激的で、民主主義的で、政治的に目覚めた市のひとつにするのに貢献したか〉と彼は書く。〈そうだ! 民主主義はうまくいくのだ〉
 とはいえ、8年間の市長職を退いた後、今度は下院と上院での孤軍奮闘の時代が続くわけで。
〈大多数のアメリカ人は今日、はぐれ者なのだ〉。しかし、〈みんなで一緒に取り組む勇気を奮い起こせれば、必要とされていることはできると、私は確信している〉〈その時、私たちはもう、下院のはぐれ者ではない〉。
 幾多の挫折にも絶対めげなかった人からのメッセージが熱い。

週刊朝日 2016年8月5日号