カナダ人作家による、斜陽化する街ウィンザーに暮らす、主に労働者階級の人々を描いた七つの短篇小説集。
表題作は、灼熱の太陽の下、煉瓦敷きに励む男たちを描く。「僕」の同僚は、皮膚を刺青で覆った男と、過去に身近な誰かを叩きのめしたという噂の男だ。アルバイトの学生が一人いて、ひと夏中仕事が続いたことをねぎらい、最終日のランチタイムにバーへ連れて行く。しかし乱闘騒ぎに。
「ループ」は自転車に乗って薬を配達する少年が主人公だ。雇い主の一番のお得意は、恐ろしげで太って裸同然の、小さい男の子に手を出さずにはいられないらしい男。ある日、彼が倒れていた。巧妙なトリックに違いないと思うも、信念を破って部屋に踏み込む。
人物の筋肉の緊張と、曖昧さを省いた誠実な語りが魅力のデビュー作。
※週刊朝日 2016年8月5日号