座長としてドラマに臨む責任
――主人公の立花海咲(たちばな・みさき)は、天草から18歳のときに上京し、カメラマンとして活躍していましたが、目の病気が見つかりどうしたらいいかわからない、というタイミングで故郷に戻ります。18歳で熊本から上京し、芸能界デビューした倉科さんと重なる部分もあったのではないですか?
海咲は「自分が築いてきたものが失われるかもしれない」という危機感を持って故郷に戻ります。私も芸能界でずっと頑張ってきて、虚勢を張っていたところもありますし、いろんな経験をしてきました。その中で「いつ自分の立場が崩れてもおかしくない」という気持ちは常に持っているので、役柄とシンクロするところ、共感するところがありました。
特に「このままでいいのかな」とか「ちょっと立ち止まろうかな」と思っている時期にこの役柄と出会えて、故郷に戻れたのは、すごくいいタイミングでした。
――「いつ自分の立場が崩れてもおかしくない」という危機感は、求められなくなるということでしょうか?
その怖さもあります。あとはお芝居って心と体の両方を使わないといけないから、うまく役柄に入っていけないときはすごくフラストレーションがたまります。求められていることに応えられなかったときにも自分を責めてしまいますし……。もうすぐ迎える40代を前にして、今後どうしていったらいいだろうという危機感もあります。
そういったもやもやを抱えている中で自分の育った地で、自分と共感できる役を演じられて、本当によかったと思っています。ただ、今回は役柄以上に、いろいろなことが勉強になった作品でした。座長として臨むという責任の重さをひしひしと感じました。芸能界も働き方改革やハラスメント対策などの過渡期でもあり、どこまで気を配ったらいいんだろうと常に考えていましたね。
――具体的にどのようなところが今までと違いましたか?
やはり座長として、作品や役に対しての責任はもちろんのことですが、参加してくださる演者さんに気持ちよく、いい環境で仕事をしていただきたいと思っていました。それを実現させるにはどうしたらいいんだろう、とずっと考えながら過ごしていました。
今までは気になったことはマネジャーさんに伝えて、そこからスタッフさんに伝えるというやり方でずっとやってきていたんですが、自分の口で伝えることが一番大切だなと考えたんです。たとえば「現場ではたばこは吸わないでください」とか、小さなことですが、私自身が言うことで「この人はこういう意識を持っているんだ」と皆さんに示すことができます。なにより来てくださる演者の方に迷惑がかかったら一番良くないので、少しでもいい環境にしていきたいなという意識を今回持つことができました。