政治家にとって、重要な技術の一つである「演説」。福島みずほ・社民党党首は、「演説はうまくない」と語るが、大切にしていることがあるという。AERA 2024年12月2日号より。
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私は演説はうまくありません。その分、何をしゃべりたいのか明確にしてメッセージを届けたいと常に思っています。2015年、安保関連法案の反対デモのときにもつくづく感じました。一番グッと伝わるのは、きれいにうまく話す演説ではなく、時につっかえながらも一生懸命話す市民の方々の演説でした。
言葉には「足がはえている」と思っているんです。水面に石を投げれば波紋が広がるように、自分の言葉がいつかどこかで何かを動かすはず。社民党の党勢は厳しいです。でも、平和のこと、沖縄のこと、女性の権利のこと、しっかり話せば絶対に真剣に聞いてくれている人がいます。言葉の力を信じていつも演説に立っています。
人の演説から学んだことも多くあります。一番は、やはり土井たか子さん。土井さんは「皆さん、お暑うございます。土井たか子でございます」って話し始めます。みんな、話しかけられたよね、という意識になるんです。人の顔を見て訴えることの大切さは土井さんから学びました。土井さんは講演会や街頭演説を一期一会と思っていて、その一つ一つに魂を込めてやっていた。私の演説の基礎をつくってくれたのは土井さんだったと思います。土井さんがいたころは、土井さんが大トリの大物演歌歌手だとすると、私はポップな前座歌手でした。でも、今は党首としてトリも務めます。キャラクターもタイプも違ってマネはできないけれど、土井さんのような力強さ、パワーや決意を見せるということは意識においています。
ほかの政党の方では、河野洋平さん(元自民党総裁、衆院議長)の演説も勉強になりました。短い挨拶でもメッセージがある、そして新しい情報を伝える。30分だろうが3分だろうが、伝えたいことがしっかりあれば心に届くんだと教えられました。
話すことと言えば、私は国会質問が好きなんです。議員の仕事で一番好きなのは立法、2番目は質問。安倍晋三元総理とのやり取りは今も印象に残っています。相手がこう返してきたらどう言おうか、いつも考えて。
私が議員になるとき、連れ合いには「挨拶だけがうまい議員にはなるな」と言われました。いまだ挨拶は上手じゃないんですが、きれいに話をまとめる技術を磨くのではなく、ちゃんとメッセージを込めて言葉を届けていきます。
(構成/編集部・川口穣)
※AERA 2024年12月2日号