まもなく総排気量50cc以下の原付きバイク(原動機付き自転車)、いわゆる原チャリの生産が終了する。その前に製品を手に入れようと、駆け込み需要も発生している。なかでもダントツで人気なのがホンダの「スーパーカブ50」だ。
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「本田宗一郎が許さない」
「スーパーカブ50は、歴史に幕をおろします」
11月1日、本田技研工業はスーパーカブ50について、「ファイナルエディション」を12月12日に発売すると発表した。
すると、SNSには、ファンの嘆きの声が書き込まれた。
「スーパーカブをなくすとは、何事だ」
「(創業者の)本田宗一郎が許さない」
「なぜ、生産終了するのか」
ホンダモーターサイクルジャパン・コーポレートコミュニケーション部の森口雄司さんは言う。
「いやいや、スーパーカブがなくなるわけじゃないんです」
生産台数は1億台超
初代スーパーカブが発売されたのは1958年。本田氏らが「生活の役に立つものでありたい」という思いを込めて作り上げた。低燃費と高い信頼性も評価され、ビジネスや通勤、通学と、幅広い分野で使用され、原付きバイクが普及するきっかけにもなった。これまでの生産台数は1億台を超える。
現在、スーパーカブはエンジンの排気量別に「50」「110」「125」と、3つのカテゴリーの製品がある。このうち、来年秋に導入される排ガス規制の強化に対応できず、生産が終了するのは「50」のみ。「110」「125」は生産が継続される。
「ただ、スーパーカブ50は70年近い歴史を積み重ねていますので、そのぶんお客様の支持があるのだと思います。ビジネスにも趣味にも使える、懐の深さがある」(森口さん)
ビジネスバイクから趣味のバイクへ
そう、スーパーカブ50は「趣味」のバイクだ。
発売から長らく新聞や郵便の配達用としても活躍してきたため、「ビジネスバイク」のイメージが強かった。
そのイメージががらりと変わったのが、90年代後半だ。
「レトロでおしゃれな乗り物というイメージで、ライフスタイルとして乗る若者が増えました」(同)
「うるさい」「危ない」というバイクの負のイメージとは一線を画し、「スーパーカブのある生活」という独自の文化が醸成されていったという。
自分の好みの外観にカスタマイズするファンもいる。今では全国にオーナーズクラブが設立され、ファンミーティングが開催されているという。