これら行政改革と政治改革の結果、小選挙区制の特性をうまく利用し衆議院選挙で与党を大勝に導くことができるリーダーは、政府と与党の双方で圧倒的な権力をほしいままにし、「官邸独裁」とまでいわれる状況をつくり出しました。2000年代前半の小泉純一郎政権と2012年12月から8年近く続いた第2次安倍晋三政権がこれにあたります。

 ただ、こうした「強い首相」(あるいは「強すぎる首相」)は、衆議院で圧倒的な勝利を収め、参議院でも「ねじれ」が起きていないことが大前提で、小泉さんの前の森喜朗政権あるいはすぐ後の第1次安倍政権などが短命に終わったことなどから明らかなように、官邸機能が強化されていても必ずしも首相がリーダーシップを発揮できるわけではありません。

 いちおう衆参両院で選挙に勝っていても、個人的な人気や力量があるとはいえなかった岸田さんは、党内の権力基盤が安定しない「弱い首相」で終わってしまいました。

 安倍さんが亡くなり、「安倍一強」の背後にあった旧統一教会や裏金の問題が噴出すると、政治改革を進めないと世論の支持が得られない一方で、あまり踏み込むと旧安倍派あるいは麻生(太郎)さんなど派閥領袖の反発を招き党内権力闘争が激化する、という板挟みに遭ったのです。

 自派閥さえ持たず岸田さんより党内基盤が弱い石破さんも、改革派のイメージと裏腹な中途半端な対応が目につき、瞬く間に失速。早くも「岸田化」してしまったかのように見えます。

(文 中野晃一/まんが うかうか/生活・文化編集部)

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