子どもたちは相談しながら、1枚のティッシュに牛乳を吸わせようとするが、じゃあ、牛乳を吸い取ってピタピタになったティッシュはそのあとどうすんだ問題や、そうこうするうちに今度は床に牛乳がピチャピチャ落ちるという次なる問題が持ち上がる。そうして失敗が失敗を呼ぶ失敗のスパイラル状態に。

「今度は床を掃除しないといけないという三つめの問題が発生して。雪だるま式にどんどん袋小路に陥っていく感じ。まあ大人はおもしろいと思って見てしまいますが、意外と子どもたち本人は、その失敗に傷ついていたりする部分も少なくないかもしれないですよね」

 このピンチ経験の怖さが子どもたちの心のしこりになって、何かの一歩を踏み出すときの足かせになってはいけない。失敗を怖がらずに、うまいこと前に進めてあげるような本ができたらと思うようになった。

「子どもたちのそういうシチュエーションをいっぱい集めていったら、子どもたちももっとピンチに慣れ親しんだり、心の準備みたいなことができるんじゃないかなと期待した。それから、牛乳くらいこぼしても拭けばいいんだからぜんぜんいいじゃんと、大人からの目線のメッセージも伝えたかった。そこで大ピンチを客観的にみせる『図鑑』という発想が生まれたというのはありますね」

(ライター・福光恵)


AERA 2023年4月17日号より抜粋