大統領選の翌日、米ワシントンのハワード大学で敗北のスピーチを行ったハリス副大統領の話を聴く聴衆=2024年11月6日(写真:ロイター/アフロ)
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 米大統領選でドナルド・トランプ氏の大勝で再選が決まり、民主党を支持する米国民の間には格差や排除への不安も広がっている。そもそも、なぜトランプ氏が勝利したのか。AERA 2024年11月25日号より。

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「失望した」「もうハッピーになれない」「閣僚人事を見ていると、(来年1月にトランプ氏が大統領に就任する前の)今からもう不安でしょうがない」

 11月5日(現地時間、以下同)の投開票日から1週間経ったニューヨークの中心街で人々に話を聞くと、民主党のカマラ・ハリス副大統領に投票した人々からは、切実な声が聞こえてきた。

「自分の励みのために読んでいた黒人作家の本が、全米の図書館からなくなるかもしれない」

 と、元大学教授は危機感を募らせる。

 共和党が強い州や地方自治体では、人種差別や性的マイノリティーがテーマになっている本を、多様性を強調している、あるいは性的描写が含まれるなどとして、図書館から撤去する「禁書」が全米で広がっているためだ。禁書には、スコット・フィッツジェラルド作の『グレート・ギャツビー』、ジョン・スタインベック作の『怒りの葡萄』など名作も多く含まれる。トランプ氏勝利のダメージは、広範囲に及ぶ懸念が浮かび上がっている。

強固なガラスの天井

 米メディアは軒並み、「選挙後のメンタルヘルスを守る専門家の知恵」「(11月28日の)感謝祭ディナーで、家族や友人と政治の話題を避ける方法」といった記事を出している。CBSニュースは、感情管理の方法として「ニュースやソーシャルメディアを見る時間を制限するタイマーを設定する」「孤独ではないことを知ろう」「ハッピーでヘルシーな気晴らしを」などという専門家のアドバイスを集めている。

「なぜ、トランプ氏大勝という結果が出たのか」は、米メディアや専門家を始め多くの人の最大の問いだ。米紙ニューヨーク・タイムズのチーフ政治アナリスト、ネイト・コーン氏は「正確に何が起きたのか知るには、しばらく時間がかかるだろう」としている。少なくとも若い人や黒人、ヒスパニックなど伝統的に民主党の支持層だった人々が、トランプ氏に投票したことは出口調査などから明らかだ。

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トランプvs.ハリスの選挙は「男女の闘い」だった