AERAで連載中の「この人のこの本」では、いま読んでおくべき一冊を取り上げ、そこに込めた思いや舞台裏を著者にインタビュー。
お笑いコンビ「銀シャリ」の橋本直のエッセイ20編を収めた、橋本の初めての著書。日常のささいな出来事へのツッコミ、お笑い芸人になるまでのこと、相方の鰻和弘への思い、結婚した妻からのダメ出し予想など、多彩な比喩とユーモアを交えてつづっている。鰻によるシュールな4コマ漫画を各章に収録した一冊『細かいところが気になりすぎて』。橋本さんに同書にかける思いを聞いた。
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「銀シャリ」の漫才で、怒濤の勢いで言葉を繰り出す橋本直さん(44)。その能弁はエッセイでも変わらない。
「あとから読んで、口数が多いなと思いました。詰め込み過ぎてないですか? 止まり方がわからないんですよ」
飛行機内のドリンクサービスに緊張し、進化する携帯電話の機種変更におののき、洗濯機にジェルボールを入れたかどうかわからなくなって洗濯物を掘り返す。日常生活のささいなことにツッコミまくるのだが、なぜかいちいち共感してしまう。
「汁」と名付けられた章では、ラーメン、鍋など、各種汁のおいしさを礼賛している。
「汁はめっちゃ好きなんで、いっぱい言いたいことあるから書こうと。汁にこれだけ熱量ある人間はいないはず」
かと思うと橋本さんが高校1年生のときに亡くなった父親のこと、相方の鰻和弘さんへの思いもつづられている。
「エッセイは一人だから暴走できるんです。漫才と違ってキャッチャーがいないから、全部出し切って投げました」
短い文章を新聞に寄稿したことはあるが、長いエッセイを書くのは今回が初めてだ。
「いかつかったですね。4分のM−1グランプリと10分の寄席の漫才が全然違うように、短いものを薄めて長くしてもダメ。とりあえず言いたいことがあふれるままに書いていきました」
どのページにも、これを言いたい、ツッコミたいという熱がみなぎっている。「毎日いろんなことが気になってムクムクしている」ので、ネタは永遠に尽きないそうだ。