21年6月18日、クマが潜む小学校付近で札幌市職員と警察官、猟友会のハンターが行動を共にする=同市提供

ハンター判断で発射できるように

 今年2月8日、環境省の専門家検討会は、捕獲や調査に国の交付金が出る「指定管理鳥獣」にクマを追加する答申を出した。さらに禁止されている市街地での猟銃使用について、鳥獣保護管理法の改正も含めて検討することを国に求めた。伊藤信太郎環境相は3月6日の参院予算委員会で同法の改正について検討する方針を明らかにした。

 これらを受け、環境省は専門家や警察庁などによる「鳥獣保護管理法第38条に関する検討会」を設置。5月23日に法改正の方針案をまとめ、7月には最終答申がなされる見込みだ。

 検討会で、警察庁保安課の渡辺和巳理事官は「ハンターの判断で発射できる範囲を拡大する必要があると考えており、現場の警察からもそう聞いている」と発言した。

21年6月18日、クマが潜む緑地を探索する札幌市職員、警察官、猟友会のハンター=同市提供

野生動物や猟銃の専門知識がない

 警察官が警職法の発令をためらう理由について、狩猟管理学が専門で、検討会の座長を務める酪農学園大学の伊吾田宏正准教授は、こう説明する。

「現場の警察官も幹部も、野生動物や猟銃に対する専門的な知識がないなかで、警職法で対処してきた。そのため、野生動物対策の基本法である鳥獣保護管理法を改正して対応してほしい、という姿勢です」

 過去には自治体の要請でハンターがクマを撃ったにもかかわらず、公安委員会から「銃弾の到達する位置に建物があった」として、銃所持許可を取り消された例もある。

「クマを駆除したハンターが法律違反に問われる。そんな健全ではない状況があったわけです」(伊吾田准教授)

 猟友会の佐藤会長も「ボランティアでクマの駆除に協力しているのに、事故を起こした場合はハンターが責任を問われる。発砲の指示を出す立場の人が責任を負うべきだと思います」と、不満を口にする。

市街地での駆除は「次元が違う」ほど困難

 検討会では大きな異論は出ず、法改正を目指す見通しとなった。しかし、法が改正されたとしても、すぐに問題が解消されるわけではないという。

「例えば、札幌市はクマの出没が多いだけに対応に慣れていて、猟友会もしっかりしている。警察との連携もよく取れています。しかし、そうではない自治体がほとんどです」(以下、同)

 そもそも、狩猟のなかでもクマの捕獲は非常に難しいうえ、危険がともなう。さらに市街地で猟銃を使用しての駆除となると、「次元が違うくらい困難」だという。

21年6月18日、札幌市内に出没したクマは地下鉄新道東駅近くの大型ショッピングセンターわきの茂みに潜んだ=同市提供
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