ドラマに描かれるのが「日常」だからこそ
ドラマ「きのう何食べた?」は、「日常」の物語だ。主人公たちは大きな事件に巻き込まれたりしないし、大恋愛や大失恋など、波乱を呼ぶ展開はない。ドラマの中に描かれているのが日々の営みだからこそ、「ロス」が起きるのだと中村氏は分析する。
「実は、“日常”はロスの宝庫なのです。日常は、決して取り戻すことのできない、貴重な、大切な時間の積み重ねによって紡がれています。それは私たちがリアルで過ごしている現実も同じです。
そういった日常を、大げさな演出を駆使せず、空気のように当たり前のように描くことで、見る人は自身の日常をオーバーラップさせ、ドラマや登場人物が自分にとって身近な存在になっていく。その“親近感”こそが、ドラマが終わった時の喪失感=ロスへとつながっていくのだと、私は思います」
そしてもちろん、「ロス」を克服するには次なる“日常”を期待するしかないではないか。中村氏は「season3」をこう推測する。
「可能性は大いにある……というか、続いてほしいと願っている人が大多数ではないでしょうか。
しかしながら、こればかりは俳優側のスケジュールや意向、テレビ局側の都合など不確定要素も多く、私の立場で断定することはできません。
けれども、これだけ盛り上がっているのですから、さらなるスペシャル版や映画化、そして続編に向けた気運があることは間違いないでしょう。個人的には可能な限り、息の長いシリーズになることを願っています」
いまはこの「ロス」をかみしめながら、「season3」の朗報を待つことにしよう。
(AERA dot.編集部・太田裕子)