一般の窓ガラス(左)に対して防犯ガラス(右)は合成樹脂の膜を挟んだ構造になっている=米倉昭仁撮影

庭に「脚立」を放置するリスク

 横浜市の家も住宅地の縁に位置し、畑や雑木林に面しているため、犯行は周囲に気づかれなかった。

 セキュリティー会社、セコムの濱田宏彰研究員は市川市と船橋市の家の庭に「脚立」が置かれていたことにも注目する。

「脚立があれば高い場所から侵入できます。無造作に置かれていれば、『防犯に気を配っていない家』と認識されやすい」(濱田さん)

 警視庁によると、一戸建て、集合住宅を問わず、2階以上の部屋の窓から侵入する事案が発生している。

 注意すべきが、トクリュウの手口が荒っぽいことだ。冒頭のケースに加え、横浜市の家では暴行を受けた被害者が死亡している。

窓ガラスの上に取り付ける補助錠の効果を説明するセコムの濱田宏彰研究員=米倉昭仁撮影

手口は「荒っぽい」 敢えて在宅を狙う

 記者も昨年、こんな体験をした。団地の2階に住む両親が、孫をかたった「特殊詐欺(オレオレ詐欺)」に遭ったのだ。ギリギリのところで金は渡さずにすんだが、刑事からはすぐに家から数日間は退避するように強く勧告された。

「やつらの手口は荒っぽい。家に金があるとわかれば、どんな手段を使ってでも侵入しようとする。2階だろうが外壁を登って、窓ガラスを破って入ってくる可能性がある」(刑事)

 先の松田さんはこう話す。

「空き巣とは違い、あえて在宅中を狙っている。お金のありかを探すより、住人を脅して、それを聞き出したほうが手っ取り早いですから」(松田さん)

 指示役は、会社の経営者や高額商品購入者などの名簿を利用して、「かけ子」に電話をさせ、資産状況や家族構成などの情報を言葉巧みに引き出す。さらに下見を行ったうえで、狙いの住宅を定めるようだ。

 実行役はいわゆる「闇バイト」で集められた人間で、「手口は素人くさい」(島村さん)。だが、プロならためらうだろう防犯カメラやセンサーライトが設置された家にも押し入る。

「指示役に言われるがまま強盗を行うため、防犯対策も意に介さないと思われます」(濱田さん)

 強引に押し入り、素人が加減を知らずに暴行する。トクリュウ型の犯罪は凶悪だ。どうすれば防ぐことができるのか。

セコムの濱田宏彰研究員
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