「最初は六本木、次に渋谷、新宿と、どんどん規制が厳しくなって、コスプレを楽しめる場所はもう池袋しかない。昨年の渋谷は、コスプレイヤーの数がそれまでの10分の1くらいに減った」(男性の一人)
ハロウィンをめぐっては渋谷や新宿で飲酒やゴミの放置の問題が深刻化。住民とのトラブルや雑踏事故を防ぐ目的から、昨年9月、渋谷区の長谷部健区長は「ハロウィン目的で渋谷駅周辺に来ないでほしい」と会見で訴えた。
すごく平和で「最高のハロウィン」
一方、豊島区の高際みゆき区長はハロウィンに向けた来場を積極的に発信してきた。今年の池ハロでは2つの会場エリアを結ぶ専用のバスを走らせた。開催直前に高際区長は「思い描いていたコスプレイヤー×イケバスのコラボ。一緒に乗るのが楽しみだわ~」と、Xに投稿した。
参加者も区が「居心地がいい場所」(「サップ石島」さん、群馬県、40)を提供してきた姿勢を高く評価する。
「オタク、コスプレをする人からすれば、自治体がこういうことをやってくれるのはすごくうれしいし、安心感がある」(「ぴょんきち」さん、神奈川県)
「街全体で盛り上げているのがいい。池袋にはコスプレの文化が根づいている」(「シエル」さん、栃木県、40)
先の増野さんも「すごく平和で、みんなが仲よくできるのがとてもいい。安全に楽しめて、最高のハロウィンだと思います」と、べた褒めだ。
この場所を守りたい
池ハロを運営するドワンゴ広報部の徳村泰聡(やすとし)さんは、参加者の意識の高さについて、こう話す。
「屋外で自分の好きなキャラクターを表現できる場所は限られています。その場所である『池ハロを守ろう』という意識をお持ちの方が大勢いる」
ゲーム「ファイナルファンタジーⅥ」のキャラクター「ティナ」に扮する「翡沙羽(ひさわ)ミドリ」さん(東京都)もその一人。
「みなさん、その作品が大好きで、敬意を持ってコスプレをしている。ゴミのポイ捨てとかマナー違反をしてしまったら、作品に対して失礼だし、この場が失われかねないことをみんなが知っている」(翡沙羽さん)
池ハロには、年に1度の再会を楽しみに全国からコスプレを愛する参加者がやってくる。普段は部屋の中でしか撮れない写真を、コスプレ仲間と一緒に街中で写せるのはこのうえない喜びだという。池袋はハロウィンとコスプレイヤーにとって「聖地」なのだろう。
(AERA dot.編集部・米倉昭仁)