はっきり言えるのは、これらの疑問の底流に米国社会の「変化」があるという点だ。変化の正体が何なのかを知りたいと思い、各局の報道を注視しているつもりだが、今のところ得心がいくものに出会えていない。

 メディア各社にしても、米国の内側で胎動する変化には気づいているはずである。ところが、予備選挙の開始早々から「まさか」続きの展開に追われ、じっくりと「変化」の中身にまで向き合う余裕がなかったのではなかろうか。

 私と同じように疑問を抱く視聴者は多いはずだ。そして大多数の視聴者にとって、疑問を晴らす手立ては日本の報道しかない。そこにテレビの存在意義がある。

 いよいよ米大統領選は11月8日の本選挙へとなだれ込んでゆく。トランプ大統領の誕生さえもが絵空事でなくなった今、米大統領選の動向に対する日本人の関心はますます高まってゆくだろう。

●より多面的・複眼的な報道の必要性 冷静な検証に基づくTBS報道に喝采

 そんななかで、5月8日の「サンデーモーニング」(TBSテレビ)に出演した寺島実郎氏(日本総合研究所理事長、多摩大学学長)が米大統領選挙に関し、興味深いコメントをした。大意を要約して紹介する。

①多くの日本人は、国務長官として実績があり、日米の防衛・安全保障問題に精通しているクリントン候補のほうが望ましいと考えているかもしれない。
②一方のトランプ候補は在日駐留米軍の費用を全額日本に肩代わりさせると主張している。だが、われわれ日本人は、そういう極端な考え方もあるという現実を直視したうえで、日米安全保障問題を改めて考え直すきっかけにすればいい。

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