シンプレクス・アセット・マネジメント社長の水嶋浩雅さん(撮影・佐藤創紀/朝日新聞出版写真映像部)

PBRだけではない

(水嶋)当時は、そうでしたね。

(岩永)その場で示された資料には米国のPBR1倍割れ企業は5%、欧州でも2割程度。でも日本は5割。その方は「東証が市場区分を見直しても、PBR1倍割れ企業を放置したままでは市場活性化なんてできません」と。

言いにくいことをおっしゃってくださったその方には今でも感謝しています。水を飲むたび井戸を掘った人に感謝するかのごとく。

(編集部)てっきり東証が「PBR1倍割れ企業、排除」と言ったのかと思っていました!

(岩永)有識者委員会での議論がまとめられた「論点整理」にPBR1倍割れに関する発言が盛り込まれ、それを東証が公表した、というのが正解です。

(編集部)それをマスコミが一斉に「PBR1倍割れはけしからん」「東証が問題視」と報じたと(笑)。

(岩永)ただ、最終的な東証の要請文から「特に、PBR1倍割れの会社は……」の部分は削りました。PBR1倍以上の企業にもさらにがんばっていただきたいですし、株価指標はPBRだけではありませんので。

(水嶋)「PBRだけではない」、同感です。日本企業はなぜこんなにキャッシュを抱えているのか、資本効率の悪い状態を続けているのか、親子上場が多いのか……。私たち運用のプロにとって「なぜ?」の項目は多岐にわたります。

(編集部)「なぜ」が多いほど運用成績も上がりそうです。

(水嶋)運用のプロはもともと日本企業の資本効率の低さを問題視していましたし、私たちもそこを攻めて運用してきました。ここ1〜2年は個人投資家にもPBRという指標の本当の意味が以前より浸透してきたように感じます。

東証が資本効率アップと株価を意識した経営を企業に呼びかけ、そこにマスコミが反応して一斉に取り上げたことが大きい。この流れがしぼむことはないと思います。

(編集部)東証は規制を改正し、日経平均などの株価指数と連動しないタイプの「アクティブ運用型ETF(上場投資信託)」が2023年9月から登場しています。

本記事が丸ごと読める「AERA Money 2024秋冬号」はこちら

暮らしとモノ班 for promotion
2024年この本が読みたい!「本屋大賞」「芥川賞」「直木賞」
次のページ
アクティブETF首位はどれ?