「AERA dot.」に最近掲載された記事のなかで、特に読まれたものを「見逃し配信」としてお届けします(この記事は10月1日に「AERA dot.」に掲載されたものの再配信です。年齢や肩書などは当時のもの)。
* * *
中日と最下位を争うヤクルトは、借金2ケタ以上、Bクラスでシーズンを終えることが決まった。
ヤクルト打線の破壊力はリーグ屈指だ。村上宗隆は9月に10本塁打を量産してリーグトップの33本塁打をマーク。86打点もリーグトップで2冠王が狙える状況。ドミンゴ・サンタナも自身初の首位打者を狙える位置につけている。打線の中軸にはホセ・オスナ、山田哲人が並び、長岡秀樹は球界を代表する遊撃手への階段を上っている。出場試合は少ないが、球界トップクラスの俊足を持つ並木秀尊もいる。今季のチーム本塁打101本はリーグトップ、498得点はDeNAに次ぐリーグ2位だ。(記録は9月30日時点)
だが、投手陣が苦しい。チーム防御率3.66はリーグワースト。先発陣の防御率4.10では試合の主導権を握れない。先発陣が早く降板するため、規定投球回を満たした投手は一人もおらず、2ケタ勝利を挙げた投手もいない。
リーグ連覇した21、22年も先発で2ケタ勝利を挙げた投手が2年連続ゼロだったが、強力打線と救援陣を整備したことで白星を積み重ねていった。だが、投高打低が進み、少ない得点で守り勝つ野球が主流になる中で、「打ち勝つ野球」には限界がある。
高津臣吾監督は今季が就任5年目。2年契約最終年でCS進出の可能性が断たれ、来季の去就が注目された。監督交代の可能性が考えられたが、9月24日に来季の続投が決定。高津監督は「今年のこの成績にもかかわらず来季の監督の要請をしていただいたことに感謝しております。チームを再建するのは簡単なことではありませんが、身を削る思いで努力します。スワローズの素晴らしい伝統を継承し新たな1ページを作り上げます」と巻き返しを誓った。
ヤクルトを取材するメディア関係者はこう振り返る。
「内部昇格なら嶋基宏ヘッド兼バッテリーコーチ、池山隆寛2軍監督、外部なら球団OBの古田敦也さん、宮本慎也さんを招聘する選択肢があったが、球団フロントは高津監督の続投を決めた。チームを根底から作り直すより、投手力を上げれば十分に戦えると判断したのでしょう。意外だったのは今季限りで引退する青木宣親に来季のコーチ打診をしなかったことです。将来の監督候補であることは間違いないので、コーチとして経験を積ませると思ったのですが、球団の外から野球を見て勉強したほうがいいと感じたのかもしれません」