塚原:ワンシーンだけとか、急にゲストで来てすぐ泣かなきゃいけない役をお願いするとか、難しいと思うんです。でも、スタッフもそうですけど、距離感が詰まっていれば、以心伝心というか、伝わるだろうと。
松下:そうなんですね。
塚原:松下さんと初めてお会いしたときみたいに、腹くくればいけるんですよ。この人と半年間心中だ、と思って入るので。
松下:初めましてはドラマ「MIU404」でした。
塚原:そうそう。「この役には背景にいろんな人生がありました。そして人を殺しました。でも人を殺したかどうかわからない役なんです」と、急激な勢いで詰めていったでしょう?
松下:いやあ、そうでしたね。初めてお会いしたときのこと、覚えていらっしゃいますか。
塚原:もちろんです。最初は、朝ドラ(NHK連続テレビ小説「スカーレット」)に出てブレークされて、絶対これから来ると言われてるだろう人が殺人者の役をやっていいのかしらって。
松下:殺人者の役でしたよね。
塚原:ただ、主演の伊吹(綾野剛さん)と志摩(星野源さん)はほっとくとずっと同時にしゃべっている感じだったから、そこと松下さんが食い合ったらどうなるのかなって興味もあって。
松下:「MIU404」は朝ドラが終わって一発目のお仕事でした。いろんな方に塚原さんとプロデューサーの新井順子さんのお二人の現場はとても素敵だと聞いていて、出演できると聞いたときはうれしかったです。
塚原:ありがたいですね。
松下:で、台本読んだら……すご!って。
塚原:あははは(笑)。野木(亜紀子)さんの台本って何か、刺してきますよね。
松下:刺してきました(笑)。これはまずいなと思って。しかも、源さんと剛さんがいて。これはプレッシャーだなあ……って、久しぶりに前日に肉を食べました。肉でも食べないとやってられないと思って(笑)。
塚原:そうね、二人に吸われますよね(笑)。
松下:お二人にそれまでお会いしたことはなかったけど、ファンとして一方的に大好きだったので、現場でいろいろ考えて緊張しちゃうかもと思っていたのですが、現場に入ると逆に「結果出さなきゃ」とか思わなかったですね。目の前にあるものを一生懸命やるしかないと思いました。自分の何かを見せるとか、うまくやろうとか、余計な感情は捨てて、みんなが作っている波にうまく乗ることだけを考えていました。
※AERA 2024年10月28日号