「漂流教室」「おろち」などで知られ、恐怖漫画の第一人者だった漫画家の楳図かずお(うめず・かずお、本名・楳図一雄)さんが10月28日、死去した。88歳だった。2012年に週刊朝日でインタビュー。漫画が大ヒットした30代の忙しい時期や、恐怖の原点、断筆について語っていた。楳図さんを偲び、週刊朝日2012年4月6日号の記事を配信する。(年齢、肩書等は当時)
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圧倒的な画力で、恐怖やギャグのなかに人間の本質を追求し続けたアーティスト・楳図かずお氏(75)。しかし、漫画出版界の風潮に違和感を覚え、60歳を前に断筆を決意。それ以降、"楳図かずお"という自分自身を作品として表現することにしたという。
いまは漫画を描きたくなることは、まったくありませんね。ほかの媒体に出合うことで何か目覚めてくるものがあるんじゃないかなと思っています。去年から歌を本格的に始めました。歌を作るのは簡単じゃないですよ。歌詞も曲もパフォーマンスも全部自分で考えるから。漫画よりは肩は凝らないですけど。
いま狙っているのは映画なんです。実はちょっと前まで僕が脚本・監督をする怖い映画の製作が進んでいたんです。僕が作る話って基本的に不条理なんですけど、まずスタッフの人たちに不条理が伝わらなくて、これにはびっくりしました。例えば、「ここに『振り向いたらお化けの顔になっていた』って書いてありますけど、どうしてそうなるんですか?」みたいな(笑)。何度も話し合いを重ねて、ようやくみんなが僕の世界に近づいた……というところでリーマンショックとかがあってダメになっちゃった。残念でしたけど、まだほかからも話があるので可能性はあります。
あと外国語をいっぱい覚えたいという気持ちはずっとあって、もう20年くらい5カ国語をラジオで聞きまくってます。特にイタリア語とスペイン語が好きですね。いま生活のなかで使う機会はないですけど、現実に使わなくても聞いているだけでよその世界が見えるじゃないですか。それにもしかして将来、日本がダメでよそに行ったときに言葉がわからないと困るし(笑)。
※週刊朝日 2012年4月6日号