ただ、それでも今年は被害が多すぎる、と担当者も首をかしげる。
「ブナの実の凶作だけがすべての原因ではないと思います。そもそも最近のクマは山奥ではなく、人里近くに住みついているという話もあります」
クマが冬眠に入るのは、あと1カ月ほど先になる。
「今後、状況がどうなっていくのか、予測がつきません」
東京都の町田市でも
クマの生息範囲が広がりつつあるのは、東北地方に限った話ではない。東京都町田市で10月18日、初めてクマが目撃されたのだ。
場所は町田市西部にあるアウトドア施設「Nature Factory 東京町田」で、テントサイトや野外炊事場のそばを流れる境川の茂みにクマが現れた。施設の笠倉秀貴所長は、当時の状況をこう語る。
「高齢者2人が登山道を下ってきたところ、5、6メートルほど離れた沢筋の方向から、がさがさと木が揺れる音を耳にしたそうです。何かと思ったら、黒い動物が急斜面を登り、その途中で脚を止めて、登山者の方を振り返った。そのとき、お互いに目が合って、イノシシではなく、クマだということがわかった」
クマが目撃されたのは、東京都八王子市と神奈川県相模原市に挟まれたエリア。両市ではクマが出没しているので、そのうちの1頭が町田市を通過したのではないか、と笠倉所長は推測する。
「このあたりの森はヒノキやスギで、クマが食べるものがないんですよ。フンが見つかったという情報もありません。エサを探して歩いている最中にこのエリアに入り、たまたま人間と出合った、という感じがします」
24日も相模原市でクマが目撃されており、同じ個体である可能性があるが、実際のところはわかっていない。
念のために笠倉所長は町田市と協議し、テントサイトと野外炊事場の隣にあるキャビンの利用を、11月15日まで止めることを決めた。
ただ、東京都内での今年度の目撃件数は112件(10月27日現在)で、去年の同時期と比べると少ない。
「とはいえ、奥多摩の方からクマの生息エリアが少しずつ広がっているのは事実のようです」(笠倉所長)