アナウンサー試験全敗でも活躍
その一方、人気局アナの中には江藤アナや日本テレビの水卜麻美アナ、テレビ朝日の弘中綾香アナのように、その能力や実績を高く買われフリー転身が取り沙汰されながらも、社員として局にとどまるケースもある。
「実際に3人とも業界内での評価は高く、フリーになれば、局員以上の高収入も期待できるでしょう。実際に水面下でそうしたオファーがあったという話も耳にしますが、結果的には会社員を続ける選択をしたようですね」(前出の放送作家)
では、なぜフリーアナ全盛の時代に人気局アナたちは会社員を続けるのだろうか。さる芸能事務所のマネジャーはこう話す。
「今はYouTube、ネット配信番組、動画配信サービスなどもありタレントの活躍の場は広がっていますが、女性アナウンサーに関しては、元局アナも含めてサバイバル競争が激化しています。それこそ毎年のように若くてフレッシュな子が参入してきますし、意外に“旬”は短い。とくにバラエティー番組ではその傾向が強いですね。逆に報道系の仕事を得意としていると、それなりに息の長い活躍ができそうな印象はあります」
また、テレビ局の労働環境の変化も無視できないようだ。前出の平田氏はこう語る。
「20年にテレ朝の大下容子さんが同局の女性局員としては初めて役員待遇の『エグゼクティブアナウンサー』に昇進して話題となりましたが、テレビ局が自局のアナウンサーの功績をきちんと評価するようになったこともあるでしょう。かつては“女子アナ30歳定年説”なんていう言葉もありましたが、大下さんは肩書や待遇だけでなく、今もアナウンサーという“出役”として番組出演を続けています。昔に比べて、局の女性アナが現場で長く活躍できる土壌もできつつあります」
23年秋に第1子を出産したテレ朝の弘中アナは8カ月近くの産休を取ったが、福利厚生の点においても女性局員が働きやすい環境が整備されつつある。こうした側面も優秀な人材の流出を防いでいるのかもしれない。
「人気や知名度があり、実績を持つ局アナがフリーで活動するとなれば、最初はそれなりに話題にはなるでしょうが、必ずしも成功するとは限りませんからね。実際、フリーに転身した多くの元局アナを差し置いて、学生時代にキー局のアナウンサー試験を全敗したホラン千秋さんや新井恵理那さんが成功を収めています。主戦場となるテレビ業界は不景気続きでギャラの相場も下がっていますし、正社員という安定した立場はなかなか捨てきれないでしょう」(前出の放送作家)
フリーになって一獲千金、など一昔前の話。人気局アナたちは、シビアに現実を見つめながら将来を考えているようだ。
(立花茂)