旧県知事公舎の蔵に使われている「いばら」という意匠を取り入れたアーチ、日本古来の加工技術である名栗彫(なぐりぼり)を施したベッドボードなど、客室内には巧に伝統工芸が取り入れられている。歴史文化を身近に感じさせつつも、ゆったりとしたクローゼットやインルームダイニングをオーダーできるタブレットなどの設備により、現代的な快適さも兼ね備えている。さらに天井まである開放的な窓からは奈良公園の緑を望み、伝統と自然が調和した上質な空間となっている。

レストラン「翠葉」/奈良公園の緑を望む空間でイノベーティブなディナーを。総料理長は仏のミシュラン3つ星レストランで腕を磨いた松勢良夫氏。自ら県内の生産者を訪ね、食材を調達する

 滞在中ぜひ楽しんでほしいのが、メインダイニング「翠葉(すいよう)」で
のディナーだ。提供されるのは、奈良の食文化からインスピレーションを得たイノベーティブな料理たち。シルクロードの交易によりもたらされた奈良独自の食文化を、創造性あふれる調理法とプレゼンテーションで表現する。

大和牛の醬油麴焼き/翠葉のディナーコース「時河」で提供される料理の一例。醤油麹で味付けした大和牛のグリルを熟成マスタードや醤酢でいただく。翠葉は宿泊者以外のゲストも利用可能

 旧県知事公舎の客間として使われていた空間に、春日大社の吊り灯篭をイメージした照明や、細緻な彫刻が施された欄間など、大正時代の趣を蘇らせた店内のインテリアも楽しんで。

ホテルツアーや墨を磨る体験も

墨を磨る/ホテルの敷地内にある吉城園の主棟で、毎週月曜の朝に行われる。奈良の伝統工芸品である奈良墨を磨り、心を落ち着かせて一日をスタートするのもいい。建物の装飾にも注目

 ゲストの滞在を彩るさまざまなエクスペリエンスも用意されている。建物の意匠や土地の歴史、アート作品をホテルスタッフが案内する〝紫翠ホテルツアー〟や、夕刻の庭園をシャンパンとともに楽しむ〝ガーデンディライト〟、奈良の伝統工芸品に触れる〝墨を磨る〟など、館内で行われるプログラムは無料なので、気軽に参加することができる。奈良の歴史的景観を巡る人力車や〝奈良公園ウォーキングツアー〟など、ホテルを飛び出して古都の風情を感じる有料のアクティビティにも参加できる。

 優雅なおこもり滞在を極めるなら、ホテル内にあるスパもお忘れなく。「SUI Spa」は、昭和期に建てられた洋館跡にあり、緻密な意匠を踏襲したデザインを採用している。2部屋ある貸し切りのトリートメントルームは、ともに天然温泉露天風呂付き。自然光が差し込むバスルームで体を温めてから施術をスタートする。

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