世間ではまだあまり注目されていないことかもしれないが、今は漫才の祭典『M-1グランプリ』の予選の真っ最中である。今年は過去最多の1万組以上の出場者がエントリーしたと報じられた。これからYouTubeなどでも予選の動画が公開されていき、年末の決勝に向けてじわじわと世間の漫才熱が高まっていくことが予想される。
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そんな中で、10月31日、お笑いコンビ「NON STYLE」の石田明の著書『答え合わせ』(マガジンハウス新書)が出版される。「漫才論」「M-1論」「採点論」「コンビ論」「未来論」の5章構成で、『M-1グランプリ2008』のチャンピオンである石田が漫才について徹底的に語り尽くしている。
一方、11月8日にはお笑いコンビ「令和ロマン」の高比良くるまの著書『漫才過剰考察』(辰巳出版)が発売される。こちらはウェブの連載に書き下ろしを加えてまとめたもの。昨年のM-1王者であるくるまが、漫才や『M-1』について深く考察している。
偶然にも、2人のM-1王者によって書かれた漫才分析本が同時期に世に出ることになった。どちらも理論派として名高いだけあって、発売前から注目度は高く、Amazon本予約ランキングでも上位に入っている。版元がこの時期に本を出版したのは、年末の『M-1』に向けて人々の漫才への関心が高まると考えたからだろう。
M-1の時期に漫才論が語られがち
実際、毎年毎年、人々の漫才需要は『M-1』をピークににわかに高まり、あっという間に落ちていく。ワールドカップの開催期間中だけサッカーを見る人のように、少なくない数の日本人が年末の『M-1』を見ることでにわか漫才ファンになり、漫才について持論を述べたりする。もちろんそれ自体は悪いことではない。
石田とくるまの漫才分析本は、そのような受け手側の需要に応えるだけでなく、プロの芸人からも求められているような気がする。M-1優勝という輝かしい実績を誇る彼らの述べる「漫才論」というのは、プロとして舞台に立つ人間にとっても傾聴に値するものだろう。そこには、面白いネタを考えるためのコツや『M-1』で勝つためのノウハウが書かれているかもしれない。