転職後に託された仕事は「ロビイング」。また官にかかわるのか、という戸惑いもあったが、就いてみると、官僚の業務のノウハウだけでなく、忙しさやマインドも知る米田さんにもってこいのポストだった。

 政策起業道場はこれまでに2クール開催し、NPO関係者を中心に計15人が受講。道場生の専門分野は若者支援や性教育、産業廃棄物対策など多岐にわたり、政策提言する省庁も厚労省、環境省や文科省などさまざまだ。米田さんは政策提言に必要なノウハウを講義。駒崎会長とともに、それぞれの道場生に最適な政策提言の動き方をアドバイスしている。

 基本は「官僚が受け取りやすいロジックを作る」こと。既存事業の問題点や課題を説明し、具体的にどの部分を改善してもらいたいのか明示する。その際、要望の主旨は1枚に収める。多忙な官僚に確実に目を通してもらうにはそれが大事なのだ。

 厚労省に政策提言する時は、提言先の課長に「ポンチ絵」を提示した。「ポンチ絵」とは政策を図示したもので、官僚がよく作る。米田さんも厚労省時代にしょっちゅう作っていた。課長は米田さんのポンチ絵を見て、「うちが作ったものみたいですね」と唸った。

 予算に盛り込んでもらう上で大事なのは「予算の規模とその根拠を明示する」こと。さらに大事なのは要請のタイミングだ。予算案の概算要求がまとまる数カ月前には省庁に働き掛けるのは必須。法律の制定や改正を審議する検討会には、報告書がまとまる年末に間に合うようにアプローチする。米田さんはこう言い切る。

「霞が関の視点がないと、役人に刺さる政策提言は作れません」

 官僚時代に培ったスキルのうち、米田さんが今の業務で最も有効と感じているのは「文書作成能力」だという。

「官僚は通知を1本書くにも、インデント(段落の開始位置を右にずらす)設定が一カ所でも整っていないと気になる人たちです。なので、民間からの要請書の中に誤字・脱字や要領を得ない文章があるとその時点で、いい加減な団体だな、と見えてしまうんです」

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霞が関の外に出たほうが、社会を変えやすい