フローレンス代表室長:米田有希さん(45)(よねだ ゆき)/厚生労働省勤務を経て、2020年にフローレンスに入職。国や自治体への政策提言、新規事業のプロジェクトマネージメントなどを担う。小学5年生男児の母。厚労省では主に薬事行政を担った(写真:本人提供)

 だが、省内の反応はクールだった。米田さんはこう吐露する。

「厚労省の多くの役人は、人々の暮らしをより良くしたい気持ちを胸に入省しますが、多忙すぎて新しいことを考える余裕がありません。私は無駄や不合理を見つけると改善したくなるので、上司に提案し、改善してきましたが、周囲からは『誰かに指示されたわけでもないのに、なんで面倒なことするの?』と言われることもありました」

役人に刺さる政策提言

 霞が関には事務処理能力が高い優秀な人材がそろっている。しかし一人ひとりが抱える業務量が多すぎて、誰一人、時間の余裕がない。このため、新しいことは避けたい、というマインドが浸透してしまっている、と米田さんは指摘する。

「結局、忙しすぎるんですよね」

 霞が関の働き方にも限界を感じていた。2013年に出産するまでは深夜残業も当たり前。部署によっては明け方まで働き、始発で帰る日々が続いた。

「帰宅してシャワーを浴び、着替えをしてすぐにまた出勤する。このことを、厚労省では『タッチ・アンド・ゴー』と言っていました」(米田さん)

 夫も霞が関の官僚で激務のため、育児はワンオペ。保育園のお迎えのため部下を職場に残してただ一人、定時退庁せざるを得なかった。育児中だからといって業務量は変わらず、週末も仕事に時間を割いた。それでも職場の不協和音を解消できず、部下のストレスも限界に達し、「あなたの育児が大迷惑なんだよ」と苦言をぶつけられるようになった。米田さんは業務量に見合う人員増を図るか、それができないのであれば異動させてほしいと上層部に求めたが、取り合ってもらえなかった。

「もう無理だなと。最後はメンタル崩壊みたいな感じになりました」

 つらそうな米田さんを見かね、転職先としてフローレンスを薦めたのは夫だ。フローレンスは「政策提言してくる団体」として霞が関官僚の多くが知る存在。夫もXのフォロワーだった。「君のマインドに合うんじゃないか」。夫にそう言われ、あらためてホームページで活動方針などを精読し、中途採用への応募を決めた。社会をより良くしたいというマインドが人一倍強く、入省後もその熱意を失わなかった米田さんは、フローレンスの「すべての親子が笑顔で生きられる新しいあたりまえを社会につくることを目指す」というビジョンに打たれた。

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基本は「官僚が受け取りやすいロジックを作る」こと