怒れる先輩の献立はある意味必然だった。食べたくても、生鮮野菜は買いづらい。野菜を取るなら保存の利きやすいキムチになる。

「豚キムチに野菜入っているやろが!」と叫びたくもなるのだ。

 日本が食料を輸入に頼っているのは、平地が少ないという地形の制約もあるが、貿易の考え方がアップデートされていないからではないだろうか。「賃金の高い日本は、農作物などの一次産業は輸入に頼って、高付加価値のものを作って売ればいい」と長年言われてきた。

 ところが、食料自給率の高いアメリカ、カナダ、フランス、オーストラリア、これらの国すべてに、賃金の面では日本はとっくに抜かれている。さらに輸送費もかかるはずなのに、豚肉をアメリカやカナダから輸入しているのだ。

 賃金が高いからではなく、農業の生産効率において、日本が負けているということだ。輸入に頼るせいで、円安になると台所事情が苦しくなる。貧乏学生の僕らのように予算の少ない人ほど食料自給率が低いため、輸入価格の影響は顕著になる。農業へ投資をして、生産効率を上げることを考えないと困窮する人はますます増えてしまうのではないだろうか。

 食料安全保障の観点からも自給率を上げた方がいい。生産効率が上がれば、国産の生鮮野菜だって安く作れる。僕も怒鳴られずにすんだはずなのだ。

AERA 2024年10月28日号

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