物価高や円安、金利など、刻々と変わる私たちの経済環境。この連載では、お金に縛られすぎず、日々の暮らしの“味方”になれるような、経済の新たな“見方”を示します。 AERA 2024年10月28日号より。
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円安やアメリカ産牛肉の生産量の減少によって、輸入牛肉の価格が上がり続けている。豚肉は国産も輸入も価格があまり変わらないそうだ。このミートショックの話を聞いて、ふと大学時代の話を思い出した。
その日、住んでいた学生寮の食堂で、寮の先輩が食事の準備をしていた。彼は50%引きのシールが貼られたメンチカツをゲットしていて、さらに豚キムチを作っていた。
あまりにも肉肉しい献立に、「野菜食べた方がいいですよ」と余計なアドバイスをしたところ、「豚キムチに野菜入っているやろが!」と怒鳴られてしまった。今にして思うと、怒りの原因は日本の農業にあったのだ。
日本の食料自給率は価格ベースで70%前後、カロリーベースで40%程度と言われている。しかし、彼の献立に関していうと、ほぼ0%なのだ。
そんなはずないと思うかもしれない。豚キムチに使われている豚肉の食料自給率(国内産の割合)は約50%。メンチカツの肉が合い挽きだとすると牛肉も入っている。牛肉の食料自給率は約35%。衣に使われている小麦粉も自給率は低いとはいえ13%。しかし、これらの数字は日本全体の平均だ。
貧乏学生だった僕らが、国産の豚肉を買えるはずがない。おそらくアメリカ産かカナダ産だっただろう。安いメンチカツに使われている合い挽き肉も外国産。国産小麦の使われている小麦粉を使っているはずもない。キムチだって韓国産。彼の食事の食料自給率は正真正銘0%なのだ。
僕らのような貧乏学生は国産の食料なんて買えない。
必然的に野菜の摂取量は少なかった。生鮮野菜は保存が利きにくいから、ほとんどが国産で価格も高い。メンチカツにキャベツの千切りを添えたくても買えなかったのだ。国産の白菜も買えない。