村上さんが翻訳の仕事をされるときは音楽をかけながら、その一方で本を書くときには音楽を聴かないという記事を読んだことがあります。翻訳のように言葉を移し替えるような作業のときは音楽の力を借りるけれども、本当に大事な言葉に向き合うときは無音の中にいるということも印象に残りました。どういうときに音楽を聴くかを明確にされている方なんですね。
もし村上さんの小説を読みながら音楽を聴くのなら、1回目はぜひ無音で。一度読んだだけではわからない世界を、2度、3度と味わうために読み返すときには、その小説に出てくる音楽を聴きながら読むといいと思います。あれだけたくさんの音楽を聴かれている方が、このシーンにはこの音楽がふさわしいと思って選んだわけですから、その曲をかけるのが一番合うのではないでしょうか。
私はクラシックが専門なのですが、村上さんにお目にかかったとき、他のジャンルのギタリストのオススメを聞けたんです。アール・クルー(ジャズ・フュージョン)と、ジャンゴ・ラインハルト(ジャズ)でした。私が知っているだけではもったいないので、皆さんにも紹介させてください。
(構成/編集部・大川恵実)
※AERA 2023年4月17日号