居間の一角が、莉子ちゃんのお絵描き場だった。紙の下半分には、家族3人で手をつないでいる絵が描かれていたが、インクの経年劣化により消えてしまったという。「物ってどんどん壊れていく。それを見るのが悲しくて、おもちゃのキッチンセットなんかも泣きながら解体したんですけど、やっぱりしんどくて。片付けはもうやめちゃいました」(松永さん)(撮影/写真映像部・佐藤創紀)

 もちろん、営利目的の企業である以上、賠償額を下げようとするのは理解できるし、弁護人が依頼人の利益を優先するのも当然です。でもそのためなら、配慮のない言葉で相手を痛めつけようがおかまいなしという姿勢がまかり通っているのはおかしい。

 ほかの方の事例だと、お父さんを亡くしたご遺族が、「葬儀費がヒラ社員にしては高いのでは?」と追及されたという話も聞きました。「一般的な相場と比べて高いのでは?」だったら正当な主張だと思いますけど、「ヒラ社員にしては」なんて言う必要ないですよね?

 弁護士がどういう主張をしているのか、依頼人である保険会社はもう少し精査すべきだと思います。僕たち「あいの会」は昨年7月、これ以上遺族や被害者が傷つけられるのを見過ごせないと、金融担当大臣と面会して、損保への指導をしてほしいと訴えました。

覚悟をきめ、謝罪依頼を受けたら…

――民事裁判を振り返って、特に苦しかったことは何ですか?

 21年9月、収監される直前の飯塚氏が保険会社を通して謝罪依頼をしてきて、受けるかどうか、何日も眠れないくらい悩みました。「謝罪によって気が晴れることなんてないのに、受ける必要はあるのか?」「彼と顔を合わせたら、自分はどうなってしまうのか?」などとグルグル考えてしまって。

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飯塚氏に、心をかき乱された