もちろん絵を描くことも好きでしたし、美術の仕事ができればいいなとも思っていました。でも、そのためには大学受験をして、より専門的なことを学ぶ必要がある。……僕、勉強ができなくて(笑)。いま「映画を観て歌手を志した」と言いましたけど、オブラートに包まずに言ってもいいですか?(笑)。勉強よりもうちょっと楽しいことないかな、という思いがずっとあったところに、歌手という夢を見つけたというのが正確ですね。

「歌手になる」と母に伝えたら、びっくりしてました。母自身が、美術関連の仕事をしていて、自分のスキルでお金を稼ぐ大変さをよくわかっていたので、止めたかったんでしょうね。「なにか他にやりたいことないの?」と誘導尋問のように何度も言われました。

■キャッチボールしたい

 母から盲導犬の指導員の仕事をすすめられて、実際に見学に行き、迷ったこともありました。今でもたまに考えます。あの時、動物関係の道に進んでいたら、どんな人生だったのかな、と。

 最終的に、やっぱり歌手になるための専門学校に行くと決めた時には、母はもうあきらめていて、「頑張りなさい」と言ってくれていました。専門学校に通った2年間は、もう本当にフリーダムでしたね(笑)。夢だけでおなかいっぱいで幸せで。これまでの人生で一番楽しかった時期かもしれないです。

――今年8~9月、こまつ座40周年(第2弾)第147回公演「闇に咲く花」では伝説のエース投手として舞台に立つ。多方面で才能を発揮しているが、球技は苦手だ。キャッチボールができないという。

松下:井上ひさしさん原案の作品は「木の上の軍隊」「母と暮せば」をやらせていただきましたが、井上さんの戯曲は今回が初めて。太平洋戦争が終わって2年。飢えや悲しみがまだ消えない日々を生きる父親と、英霊として戻ってきた息子の会話劇です。演出の栗山民也さんとは10年以上前から一緒にやらせていただいていて、僕にとっては原点に返れる場所。成長を見ていただくというよりは、ここ数年で経験したことを武器にせず、何もない自分でぶつかって、「お前は変わらないな」と言ってもらいたいですね。

 エース投手を演じますが、僕はキャッチボールができなくて(笑)。ボールを投げることはできますよ。どこに飛んでいくかわからないというだけで。そして、こちらに飛んできたボールは、キャッチする前に反射的に避けてしまう。今回は野球をするシーンはないのでよかったです(笑)。

 でも、これを機に、ちゃんと練習しようかなと思っています。やっぱり、キャッチボールくらいはできないと(笑)。共演する浅利陽介くんは球技が上手なので、教えてもらう予定です。これまで番組の企画で何度か球技をして、お恥ずかしい姿を散々さらしてきましたが、それも今年で見納めになっちゃうと思います。たぶん、ですけど(笑)。

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