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手ブレ補正機構付きのフルサイズ対応中望遠レンズ

 単焦点開放F1.8の85mmレンズにしては、ずいぶんと鏡筒が太めだな、という第一印象を受けたが、同スペックのレンズとしては世界初のVC(手ブレ補正)機構が内蔵されているから、やむをえないのかもしれない。
 すでに発売されている35mmや45mmと同じ35mm判フルサイズ対応の手ブレ補正機構を内蔵したF1.8のシリーズということになる。
 焦点距離85mmはポートレートを撮影するための必携レンズであり、自由なアングル、動きのある被写体を捉えるため手持ちで撮影することが多い。また大口径の特徴を生かし、室内において窓からの自然光や部屋の照明のみによる撮影にもよく使われる。とくに女性のポートレートでは、肌の滑らかな再現性を重視したいことが多いから、微光量下でも、極端な高感度設定は避けたいもの。手ブレ補正機構を内蔵し、さらに3.5段分の効果は実用上もたいへん有効である。
 レンズ構成は9群13枚。同等の焦点距離と開放F値のレンズの中では最多で、ぜいたくさに驚かされる。機動力を重視したいポートレート派には注目のレンズといってよいだろう。

コーヒー店の主人。窓からの明かりと室内照明のミックス光による手持ち撮影。絞り開放でもハロやフレアは皆無。コントラストも高い。シャープネスだけではない高品位な描写だ。ボケは後ボケのほうが自然。手ブレ補正は室内の自然光ポートレートに最強のレンズだ●キヤノン EOS 5 DMarkⅢ・AE(絞りf1.8・50分の1秒)・ISO200・AWB・RAW
コーヒー店の主人。窓からの明かりと室内照明のミックス光による手持ち撮影。絞り開放でもハロやフレアは皆無。コントラストも高い。シャープネスだけではない高品位な描写だ。ボケは後ボケのほうが自然。手ブレ補正は室内の自然光ポートレートに最強のレンズだ●キヤノン EOS 5 DMarkⅢ・AE(絞りf1.8・50分の1秒)・ISO200・AWB・RAW

デザイン
新しいSPシリーズに共通した金属外装でブラック仕上げ、基部のシルバーリングも高級感があり美しい仕上げ。フードはバヨネットのプラスチック製

使用感・操作感
キヤノン用で700gあり少々重く、鏡筒も太い。コンパクトとはいえないが、手ブレ補正内蔵なら納得の仕様だ。AF速度も良好。フォーカスリングの幅が適宜でMFの操作性もいい

描写性
非球面レンズを採用した85mmのレンズも多いが、このレンズは不採用。ただし開放から完全に実用性能を誇る。シャープさのなかに優しさを感じ、ボケ味も自然。周辺光量も十分だ

◆赤城耕一

*  *  *
●焦点距離・F値:85mm・F1.8●レンズ構成:9群13枚(XLDガラス1枚、LD(異常低分散)ガラス1枚)●最短撮影距離:0.8m●最大撮影倍率(35mm判換算):1:7.2●画角:28°33'●フィルター径:φ67mm●マウント:ニコン用、キヤノン用●大きさ・重さ:ニコン用:φ84.8×88.8mm・660g キヤノン用:φ84.8×91.3mm・700g●価格:税別11万円(実売9万9900円)