クルド人を非難するデモが相次いでいる。7月にJR蕨駅周辺であったクルド人へのヘイトデモに対し、「差別はやめろ」と訴える人たち(写真:温井立央さん提供)
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 埼玉県南部の町で今、クルド人に対するヘイトが増えている。なぜクルド人がターゲットになったのか。AERA 2024年10月14日号より。

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「日本から出ていけ、テロリスト」「ボケ、日本から出ていけ」

 埼玉県南部の川口市。この町で、飲食店を経営するクルド人男性(35)の店で、電話口から男の罵声が響く。

 嫌がらせの電話は、1日中鳴り続けることもある。さらに、店の外から「日本から出ていけ」などと大声で叫ばれたり、ユーチューバーが店に来て隠し撮りをした動画をネットに上げられたりもした。男性は身を守るため、電話を録音するようになり、店内に防犯カメラも取り付けた。

「国を持たない世界最大の民族」と呼ばれるクルド人。中東のトルコやシリアなどに暮らすが、少数民族ゆえに差別と弾圧を受け、故郷を逃れている。日本にも、2千~3千人のクルド人が暮らしているといわれる。ほとんどがトルコから来て、多くは川口市と隣接する蕨市に住んでいる。その町で今、クルド人へのヘイトが増えている。

「自警団」まで結成

 先のクルド人の男性は15歳のとき、先に来日していた父親に会いに日本に来た。一時的な来日の予定だったが、トルコ国内で民族差別が悪化し、日本に残ることに決めた。22歳で結婚し、在留資格を取得、裸一貫で頑張り自分の店を持つまでになった。3人の子どももいて、いままで地元で揉めるようなこともなかったという。それが昨年以降、取り巻く環境が一変したのだ。男性は言う。

「私の家族全員が写った写真も勝手にSNSに上げられました。クルド人の子どもが『クルド人は帰れ』と、日本人の大人に怒鳴られるという話も聞いてます。とても怖いです」

 なぜ、クルド人が標的にされたのか。

 クルド人へのヘイトが目立つようになったのは昨年春ごろ。当時、3回目以降の難民申請者の強制送還を可能にする入管難民法改正案が国会で審議され、それに対する抗議行動が起きると、難民申請者が多いクルド人に注目が集まった。大きなきっかけとなったのは昨年7月。川口市でクルド人同士の切りつけ事件があり、けが人の搬送先の病院に親族らが集結し乱闘騒ぎが発生した。この騒ぎを境に、クルド人へのバッシングが一気に広がった。SNSにはクルド人へのデマや中傷があふれ、日本人の安心・安全を取り戻すためとする「自警団」も結成された。ヘイトデモや街宣も、頻繁に行われている。

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