2月に支援団体「在日クルド人と共に」に届いた脅迫メール。ヘイトメールなどをしてくる人物は、ネットに感化された人物が多いという(撮影/写真映像部・山本二葉)

「圧倒的なマイノリティー(社会的少数者)に対し、マジョリティー側が烙印を押し、差別と偏見を助長している」

 こう指摘するのは、蕨市と川口市を中心に活動するクルド人の支援団体「在日クルド人と共に」代表理事の温井立央(たつひろ)さん。

 同団体にも昨年5月以降、嫌がらせや脅迫の電話やメールが相次ぐようになった。

住民よりネット民が

「出ていけ」「殺してやる」「支援をやめてほしい」……。今年になって団体に届いたヘイトメールはすでに約70件。2月には、「皆殺しにして、豚の餌にしてやる」「クルド人皆殺し万歳」という脅迫メールも届いた。この脅迫メールに対し、温井さんは4月に被害届を提出。埼玉県警蕨署は8月、東京都足立区の男(34)を脅迫容疑でさいたま地検に書類送検した。

 脅迫や嫌がらせをしてくるのは川口市や蕨市の住人ではなくネットに感化された人物が多い、と温井さんは指摘する。クルド人に何かをされたわけではなく、川口市や蕨市に住んでいるわけでもない。ただYouTubeでクルド人に対する差別的な動画などを見て、何の検証もせず信じてクルド人に対しネガティブな感情を抱いているだけだ、と。

「蕨や川口で暮らすクルド人の中には、生活習慣の違いなどからごみの出し方や交通マナーを守らず地元の人とトラブルになっている人がいるのも確かです。しかし、こうした問題を『クルド人』という民族の属性で括ることがヘイトスピーチを生み出しています」

(編集部・野村昌二)

AERA 2024年10月14日号より抜粋

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