さらに高騰の要因に挙げられるのが、人手不足や人件費の高騰だ。扶養控除枠で働くアルバイトやパート従業員の多くは「年収の壁」がネックとなり、労働時間が長くなるのを拒む傾向がある。そうした中、コロナ禍で最低限まで減らした人員の募集をかけても十分な労働力を確保できない状態が続いているという。
もう一つ、ホテル業界の事情として見逃せないのはコロナ禍の負債の回収だ。とりわけ都内では東京五輪が開催される20年を控え、多くのホテルが設備投資にはしった。しかし、東京五輪は21年に延期の上、無観客開催になったことで都内のホテルは「地獄の3年間」を味わった、と高部さんは振り返る。
「コロナ禍の3年間で観光産業は大きな痛手を負っています。コロナ禍の収束後は、国の『ゼロゼロ融資』の返済を含め損失を埋めないと経営が安定しません」
高部さんは都内のホテルは今後も高止まりの傾向が続くと見ている。
「資材費や人件費の高騰で当面は新規参入が困難なうえ、アジア圏の所得上昇に伴ってインバウンドは引き続き好調に推移すると考えられます。都内のホテル価格が下がる要因は見つかりません」
安く泊まるコツとは
都内に穴場はないのか。高部さんによると、ビジネスホテルの場合、大田区の蒲田や北区の赤羽、荒川区の日暮里エリアなどが相対的に安い。神奈川県の横浜市や川崎市エリアも狙い目という。
「旅行サイトで粘り強く探せば、1万円以内で泊まれる時もあります」(同)
中央区や江東区東部、港区・品川の一部エリアを含む湾岸エリアは、近隣でのイベントや展示会によって価格変動の幅が大きいため注意が必要だという。
安く泊まるコツについて高部さんは「早めに押さえる」のが必須と言い切る。2、3カ月前にとりあえず予約してホテルを押さえる。その後、キャンセル料を徴収されるぎりぎりまでこまめに他のホテルの料金をチェックし、少しでも安いホテルが見つかれば切り替える、というやり方しかないようだ。
グループや家族連れの場合、キッチンなどを備えたマンションタイプのホテルがおすすめという。1部屋あたりの単価は3~4万円だが、5~6人で利用すれば1人あたり6000円前後に収まる。また、ドミトリーは1人3000円台でも泊まれるが、一室に複数のベッドが設置された共有スペースではトコジラミ対策が 難しいため、選択する際は清潔度を十分チェックした方がいい、と高部さんはアドバイスする。(編集部・渡辺豪)
※AERA 2024年10月14日号より抜粋