出直し知事選への出馬を表明した記者会見での斎藤元彦氏=9月26日
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 斎藤元彦前知事の失職に伴う兵庫県知事選には、すでに数人が名乗りを上げており、今後も増える可能性がある。そうしたなか、斎藤氏が早くも動き出したようだ。朝の駅前での“あいさつ”からSNS展開まで、選挙を見越した動きに余念がない。候補者が乱立すれば斎藤氏が利するとの見方もあるが、戦々恐々と状況を見守る県職員もいる。

【写真】兵庫県庁を出ていく斎藤元彦氏。また戻ることがあるのか?

 10月3日朝、激しい雨が降る中、兵庫県のJR芦屋駅前のデッキで、「おはようございます」と頭を下げていたのは、前県知事の斎藤氏だ。内部告発問題をきっかけに県議会で不信任決議が可決され、出直し選への立候補を表明したうえで失職。31日告示、11月17日投開票の知事選に出馬を表明している。

 朝の出勤や通学途中の市民の中には、斎藤氏にツーショット写真や握手を求める人や、「頑張って」と声をかけていく人もいる。演説が終わり、テレビカメラに囲まれた後、「ありがとうございました」と感謝を述べると30人ほどの聴衆から拍手が起きた。

「この人がパワハラしたのかな?」

「この人がパワハラしたのかな。そう思えない」という聴衆もいた。県議会では終始、強張った表情だった斎藤氏だが、このときばかりはご満悦とばかりに去っていった。

 斎藤氏の脇には地元市議もいて、選挙に向けた態勢を組んでいるのは明らかだった。

 知事選には、日本維新の会の清水貴之参院議員、共産党が推薦する医師の大沢芳清氏、元経済産業省の官僚・中村稔氏、前尼崎市長の稲村和美氏ら複数人が立候補を表明したり、意向を示したりしており、今後も増える可能性がある。現職の小池百合子知事が3選を果たした今年7月の都知事選では、過去最多の56人が立候補し、ポスターの掲示板が足らなくなり、貼れなかった候補者まで出た。

 自民党の兵庫県議がこう話す。

「かなりの候補者が乱立するんじゃないか。東京は小池知事がダントツの強さを誇り、混戦を制したが、兵庫はそこまで強い候補がいない。今、名乗りを上げているなかでもっとも知名度があるのは斎藤氏。他の候補で票の奪い合いになると、斎藤氏が浮上する展開は十分に考えられる」

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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