「候補者がいっぱい出て、“漁夫の利”で斎藤氏が当選するかも、と県庁でも話題で、ビクビクしながら仕事をしている」

 そう話すのは30代の県職員Aさんだ。これまで何度もAERA dot.の取材に応じてくれていたが、自身も斎藤氏からのパワハラを受けた当事者だという。Aさんが斎藤氏の「被害」を受けたのは2度。最初は斎藤氏が就任して1年ほどのころだった。

「県庁内で、同僚のBさんとエレベーター前で立ち話をしていたときです。そこへどこからか、斎藤氏が秘書課の“おつき”を連れて現れました。「うわぁ、知事や」と思ったら、舌打ちして『俺は知事やぞ、どけよ』『仕事してるのか?』などと小声で言いながらエレベーターに乗っていきました。身がすくむ思いでした」

 と話す。ちなみに休憩時間で何ら仕事には問題はなかったという。

 2度目は、Aさんの上司が斎藤氏に政策などの報告をする際に同席したときのこと。斎藤氏はご機嫌ななめな感じで、パソコンのマウスをカチカチさせながら、興味なさそうに報告を聞いていたという。

「二度と県庁に来てほしくない」

「すると、『〇〇のことはどうなってる』と上司に所管外のことを聞き始めました。答えに詰まる上司は、かつてその担当をしていた私の方を振り向き、助けを求めました。しかし、かなり前のことで的確な答えがすぐに浮かばず、『〇〇はこのような方向性のようで』と、なんとか切り抜けようとしました。すると斎藤氏は『なんでわからんのや。そういう質問もあると想定しとくんや』『県民の税金で県庁は成り立っているんや。理解しているんか。それでも県職員できるんか。失格や』とマウスを異常な速さでカチカチさせながら恫喝したんです。全身、震えました」(Aさん)

 内部告発の文書への反論会見で、告発した元県民局長を「公務員失格」と罵倒した斎藤氏。同じような発言を現場でも繰り返していようだ。

 今もって、斎藤氏からのパワハラなどの訴えはやまない兵庫県。Aさんが力を込めて言う。

「あんな人は二度と県庁に来てほしくない。多くの職員がそう思っています。斎藤氏は知事失格です」

 (AERA dot.編集部・今西憲之)

著者プロフィールを見る
今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

今西憲之の記事一覧はこちら
暮らしとモノ班 for promotion
ヒッピー、ディスコ、パンク…70年代ファションのリバイバル熱が冷めない今