ところが関西ローカルで、放送法制定当時の歴史を説き、正面きって高市発言批判を行ったニュースがあった。3月4日の関西テレビの「ワンダー」である。ここで神崎博記者は舌鋒鋭く、十数分にわたって問題の所在を論じた。いまや毎日放送の「ちちんぷいぷい」も含め、東京よりも大阪がよっぽど元気に、政府の投げるボールを打ち返している感がある。

●東日本大震災時に何が起きたか 検証報道は力作揃い

 次に3月11日前後には、東日本大震災から5年を迎え、被災地に寄りそう報道が相次いだ。いまだに故郷に帰れず避難先で生活している人は、10万人に達すると言われている。それだけに論じなければならないテーマは多岐にわたる。だがそのなかでも特に重く響いたのは、あの時、東電福島第一原発内部とその周辺で、何が起こり、どう対処したかの検証である。

 3月10日の「NEWS23」と、13日のNHKスペシャル「原発メルトダウン 危機の88時間」は、膨大な調書と未公開資料や新たな証言をもとに、ドラマ仕立てで「あの時」を再現した。これによれば「東日本壊滅」という最悪のシナリオを回避できたのは、髪の毛一筋ほどの幸運のおかげだったと言う。慄然とする話である。

 また3月11日の「報道ステーション」と14日のNNNドキュメント'16「THE放射能 人間vs放射線 科学はどこまで迫れるか?」は、福島県の県民健康調査に基づき、子どもの甲状腺がんの患者が急増している事実を伝えた。症状と放射線との因果関係がまだはっきりしないため、今後のさらなる調査と研究を待たねばならないが、「因果関係あり」となれば、これまた恐ろしい事態である。続報が望まれる。

 この他、隠れた事実を掘り起こした報道としては、関西ローカルの、3月7日の映像'16「よみがえる科学者~水戸巌と3・11」(毎日放送)がある。この番組は、原発事故が起きる30年以上も前から「原発の国の安全基準は甘すぎる」と批判し、科学は誰のためにあるのかを問いかけ行動した科学者がいたことを紹介する。

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