東京湾岸エリアには多くのタワマンが建設された=米倉昭仁撮影
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 地震の際、超高層ビルの上層階を長時間大きく揺らす恐れがある「長周期地震動」。課題となっているのが、既存の分譲タワーマンションの耐震安全性だ。国は対象エリアを示し、補助金制度も設けたが、対策は一向に進んでいない。

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タワマン防災、「長周期地震動」対策は?

「東日本大震災ではエレベーターは止まりましたが、半日ほどで復旧しました。それ以外の被害は特にありませんでした。タワマンは、大臣認定を受けた設計でないと建設できません。なので、われわれのマンションは大地震が起こっても安全だと認識しています」

 首都圏に立つ、あるタワマンの管理組合の理事長は、冷静にこう言った。理事長は上層階に暮らしているが、「阪神・淡路大震災級の大地震にも耐震安全性が確保されている」と言う。毎年、防災訓練を実施するほか、飲料水や食料も備蓄する。

 では、長周期地震動対策はどうだろうか。

 長周期地震動とは、大地震の際に生じる、周期(揺れが1往復するのにかかる時間)が長い大きな揺れのことだ。地盤と高層ビルが共振して揺れ、大きな被害が出ることもある。東日本大震災では、大阪市内の最大震度は3だったが、超高層ビルの上層階では大きな揺れとなり、大阪府咲洲庁舎は天井の落下や床の亀裂など360カ所が損傷した。

国は安全性の確認を推奨

 そのため、国は補助金制度を設けて、建物の安全性の確認を推奨している。

 硬い岩盤で囲われた「おわん」のような地下構造を持つ平野部に地震波が入ると、岩盤に反射してなかなか弱まらない。東京、名古屋、大阪の大都市はすべてこの地質条件に当てはまる。

 このマンションが長周期地震動の「対象エリア内」にあることは、理事長は知っていた。

 だが、長周期地震動を考慮したタワマンが建設されるようになったのは、基本的に東日本大震災以後だ。長周期地震動への安全性を確認するには、建物を設計したコンサルタントや施工会社に問い合わせる必要がある。

「私は防災についてそれなりの知識はありますが、普通のタワマンの管理組合が住民から『長周期地震動対策』について聞かれても、何のことかわからないと思います」

 別の湾岸エリアのタワマンの防災担当にも話を聞いた。

 東日本大震災では「防災対策の重要性を身に染みて感じた」という。このタワマンでも、大地震に備えた訓練を毎年実施する。長周期地震動に備えて家具を固定する必要性も住民に「周知している」という。

 しかし、国が補助金制度を設けて長周期地震動に備えた建物の安全性の確認を推奨していることは「知らなかった」。

国が補助金制度を設けて長周期地震動に備えた建物の安全性の確認を推奨していることは「知らなかった」と、語るタワマンの防災担当=東京都内、米倉昭仁撮影
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長周期地震動の耐震診断「申請」ゼロ