今回の自民党総裁選で、「安倍さん」が本当に亡くなったのだと思った。「安倍政治」というものに、ここでいったん本気で区切りがつけられるのではないかと、私は期待したい。新総裁の石破茂さんはさっそく解散を宣言し、「裏金問題隠しか!」などと野党からの攻撃を浴びているが、安倍さんの政治で失った柔らかさ、温かさを、日本社会が取り戻していく、そんな時代になっていければいいと心から願うばかりだ。なんていうか、政治に、とても疲れた。それは安倍さん疲れだったのではないかと、今は思う。
それにしても、日本の男は、怖い女が好きなのだということを、改めて突きつけられた総裁選でもあった。高市さんは、どう考えても「怖い」タイプの女である。蓮舫さんのことを「怖い」という人はいるが、それは本当の怖さというものを知らないのだろう。怖い顔をして怒るのはフツーの人の証拠だ。本当に怖いのは、小池さんのようなしたたかさ(ですよね)、計算高さ(計算、お上手そうですよね)、「排除します」と不敵に笑う冷酷さである。本当に怖いのは、口角が不自然にあがる張り付いた笑顔(←目は笑ってない)で、「やられたらやり返す」(とか言いそうでしょ)と語る高市さんのほうである。そういう怖さを持つ女に、男は従いたくなるのだろうか。
高市さんが総理の椅子まであと半歩までたどりついた過程は、どういったものだったか。日本の女性のリーダーという視点から、今後深く考察していく価値はあるだろう。サラリーマンの父と警察官の母という一般家庭から出てきた無所属の女性議員が、ここに来るまでの道の険しさはどれほどのものだったか。早稲田大学と慶応大学、2校に現役合格するほど優秀で、それなのに「女の子だから」と上京させてもらえずに地方の国立大学に通った高市さんが歩んできた「ガラスの天井」の道は、どのようなものだったか。32歳という若さで衆議院議員に初当選するほど頑張り、だからこそ自分の氏にこだわっている高市さん自身が、選択的夫婦別姓を率先して否定するのはいったい何故なのか。