駐在ファミリーカフェは、海外駐在中または経験のある20~50代が活動中。定期的にオンラインミーティングを開き情報交換している(写真:駐在ファミリーカフェ提供)
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 海外赴任が決まると、家族も一緒に赴任先で数年生活することが当然のようなイメージがある。しかし、共働き世帯が増えた現代で、それまでのキャリアを中断することに悩む配偶者が増えている。AERA 2024年10月7日号より。

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都内在住の30代の会社員の女性は、夫の米国赴任が決まった時は育休中だった。渡米時は20代で、子どもは生後半年を過ぎたばかり。慣れない土地での子育てはそれほど余裕はなかったが、「子どもにとって母親以外の人と関わることも大事だと思い、同世代の子どもがいる日本人親子と積極的に交流を持ちました」と話す。

 一方で、「私が下手こいたら、このコミュニティーの中で私たちは行き場を失うという強迫観念はすごくあった」と思い返す。当時、コミュニティー内の母親で最年少だった女性は、「美味しいお店を見つけ、いち早くみなさんにお知らせすること」を自分に課した。

「例えばピザパーティーなどの企画力、食材の調達から部屋の装飾のセンスが求められました。これまで仕事で求められたスキルとは別物でしたね」と振り返る。英語を学ぶ余裕はなかったという。

 2年間の育休も満了になる頃、今後のキャリアについて人事に相談した。すると、一度退職しても再雇用の確率が高まる制度があることを知り、退職を決意。帰国後、その制度を活用して無事同じ部署に同じグレードで戻ることができたが、「同世代の女性が出世をしているのを見ると、『この5年間仕事を続けていたら今頃どうなっていたのだろう』と思うことは正直あります」とぽつりとつぶやく。

 海外駐在情報を提供する「駐在ファミリーカフェ(旧・駐妻カフェ)」が海外駐在員、または過去3年以内に海外赴任経験のある会社員に実施したアンケート結果によると、駐在員の配偶者の約45%が勤務先を退職していることがわかった。

無理解な夫にキレる

 冒頭の女性のように、自分のキャリアをいったん止めたことで、帰国後に悩むケースは多い。働く女性にとっての海を渡る決断はとても重いが、気持ちを理解してもらえないことに苦しむケースもある。

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「遊びと子どものお世話」と言われキレた