各店の購買データから客層を価格に厳しい、健康志向、品質重視など9類型に分類。店ごとに類型に沿った品揃えや配置にして、同質化競争から脱した(写真/山中蔵人)
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 日本を代表する企業や組織のトップで活躍する人たちが歩んできた道のり、ビジネスパーソンとしての「源流」を探ります。AERA2024年 9月30日号より。

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 1999年5月、英リバプールの三菱商事の食品子会社から帰国し、食品トレーディング部からスーパーマーケットチェーンを展開するライフコーポレーションへ出向、取締役・営業総本部長補佐に就いた。33歳。三菱商事は当時、ライフの株式を持つなど関係を深めていて、出向者は3代目だった。

 ライフの前身は、清水信次氏が大阪市で1961年に設立したライフストア。大阪府豊中市に1号店を開き、近畿圏と首都圏で出店を重ね、いまそれぞれに約150店を持つ。店ごとに来店者のデータからニーズを分析し、品揃えを思い切って変えるなど、人口減という小売業への逆風に備えを進めている。キーワードは「準備力」だ。

 慶応大学で体育会バスケットボール部に所属し、思い出深いのが早稲田大学との伝統の早慶戦。3年目の86年6月は早大キャンパスであり、慶大は関東大学リーグで3部に落ちていた低迷期。圧倒的に早大有利とされたが、調子がよくてシュートを次々に決め、勝負どころで3ポイントシュートも入れて、5年ぶりの勝利に貢献した。

 翌年6月、横浜市の慶大・日吉キャンパスであった部活最後の早慶戦は、OBがたくさん観にきて、自身も意気軒昂として迎えた。だが、思わぬ点差で惨敗する。振り返ると、前年の活躍で力が入り過ぎ、気持ちも舞い上がって、勝つための準備を十分にしていなかった。ここで「事を成すには力まず、はやらず、徹底的に準備することだ」と胸に刻む。岩崎高治さんが、ビジネスパーソンとしての『源流』になったとする体験だ。

バスケの始まりは中学校(写真/本人提供)

「準備力」を発揮し全店回って話を聞き徹底的に課題を知る

 ライフへ出向して約1年で、当時あった約190店、すべてを回った。店長らの話を聞き、店ごとの立地条件や課題を知って、改革すべき点をみつける。全店を回らなくても課題くらい分かる、との声もある。だが、新しい舞台に立っても力まず、はやって何かに着手する前に、やるべきことに備える『源流』からの流れは、10年の間に水量を増していた。

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高校から誘われた中学校3年生の区大会の決勝戦