候補者の外交・安全保障政策について前述したが、しかし、それぞれの政策の違いを判断基準にして投票する自民党員はどのくらいいるのだろうか。「次の総選挙で勝てる顔」。これが一番の投票理由であり、「政策による選択」という空気は伝わってこない。
さらに言えば、一票を投じる権利のない大多数の国民は十分に候補者の政策や人となりを知ることもなく、関心を強く持つこともないまま、他人(ひと)事として、選挙戦を横目で何となく眺めている……。
そのような状況下で自分たちの国のトップが決まっていく過程には、何かが間違っていると強く感じざるを得ない。
私は米国の大統領選挙を毎回詳細に追っている。米国の大統領選にも、年単位の長丁場で莫大な資金がかかる、相手候補に引っ張られて政策が強気に走るなど、問題は実に多い。しかし、候補者の政策が何カ月にもわたって連日報じられ、人々が日々そのことを議論し、多くの国民が自身を当事者と捉えて選挙運動に身を投じながら国の顔を選ぶ選挙当日を迎える。こういった人々の姿勢や社会のあり方には、日本の私たちが学ぶべき点が数多くあるだろう。
自民党総裁候補者の発言について、投票権のない人であっても、自らの総理大臣を選ぶ過程だと認識して冷静に関心を寄せ、問題だと思う発言にはそれに対する意思表明をする姿勢が必要である。