全国各地のそれぞれの職場にいる、優れた技能やノウハウを持つ人が登場する連載「職場の神様」。様々な分野で活躍する人たちの神業と仕事の極意を紹介する。AERA2024年9月30日号にはスナックミー 社長 服部慎太郎さんが登場した。
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「おやつ体験」を提供するスナックミーは、インターネット発の製菓メーカーだ。起業したきっかけの一つは、当時2歳の娘におやつをねだられた時、安心してあげられるお菓子が少なかったことだった。
素材にこだわり、自身が納得するおやつを作りたいとの思いの下、2015年に創業。設立当時から続く「おやつの定期便」は8種類のおやつを毎週〜月に1度届ける。利用者には事前に好みを聞くアンケートを取るのが特徴だ。その内容をベースに、好みとは違うおやつを一つは交ぜることも。購入者は小箱を開けるまでどんなおやつが届くかわからない。開ける前のドキドキ、開けた瞬間の驚きを含めての“体験”を提供する。「『私のおやつの新しいドアを開けてもらった』との声をもらったこともあります」
創業後、大ピンチを迎えたことはないものの、3年目に転機となる出来事が起こった。売り上げの数値に目がいってしまい、体験ではなくモノを売っている感覚に陥ってしまった。利用者の反応も良くなかったという。
「その時、モノとして安くて良いものを売るか、体験を売り続けるかで迷いました。そこで、ユーザーの方に直接話を聞かせてもらいました」
自ら電話をかけ、率直な意見をもらう中、利用者が求めているものは、“ワクワク感”であることを再確認した。
「そこからは“体験”に価値を置くことに迷いがなくなりました」
2022年には都内に実店舗をオープンし、今年8月には3店舗目となる「スナックミースタンド押上店」を開店。目玉商品は、白砂糖不使用で無添加のソフトクリームだ。安定剤が入っていないため溶けやすく、「賞味期限は60秒」。開発から販売までわずか2カ月で実施し、その間50個ほどのソフトクリームを食べ歩いた。社内で共有しているのは「小さく、早く、動いて大きな成果につなげる」だ。
「大きく考え過ぎると遅くなったり、結局やらなかったりすることも。まずはやってみて、その結果を見てブラッシュアップしていく考えです」
デジタル発のお菓子メーカーはこれからも進化し続ける。
「おやつと世界の両方を面白くしていく中で、将来は既存の大手製菓メーカーと何かしらの形で肩を並べるぐらいになりたいですね」
(フリーランス記者・小野ヒデコ)
※AERA 2024年9月30日号