第69回紅白歌合戦での松田聖子。純白のフリフリなドレスを着られるのは、さすが松田聖子なところ。永遠にかわいいのだ=2018年12月31日

ピュアな恋愛への“うらやましさ”

 そして「青い珊瑚礁」は楽曲の面以外でも、今の若者も惹きつけているようだ。

「NewJeansのHANNIさんは松田聖子さんの曲を歌い、日本のレトロかわいいを表現されていましたが、そのような昭和の時代を、いまの若者たちは“うらやましい”と言います」

 と、世代・トレンド評論家の牛窪恵さんは話す。

「豊かさに対してのうらやましさではなく、松田聖子さんの全盛期は、誰もが “かわいい”と認め合える共通のアイコンがあった。多様化した現代では色々な角度からの“かわいい”があり、それが受け入れられること自体は好ましいのですが、いまや人気グループのNewJeansを知らない20代さえ少なくない。

 しかし、当時の松田聖子さんはアイドル中のアイドルで、老若男女誰もが知っていて、みんながみんな“かわいさの象徴”だと認識していた。だからこそ聖子さんは『(かわいこ)ぶりっ子』とも呼ばれたのでしょう。そこには社会の一体感のようなものがあり、それを若者たちは“うらやましい”と言うのです」

 かつて、日本中の若い女性たちの多くは、こぞって髪形を「聖子ちゃんカット」にしていたものだが、今の世の中では考えられず、同じような“一体感”は抱きにくいのかもしれない。
 

 そして「青い珊瑚礁」には、能天気ともいえる恋愛称賛の純粋さに対する“うらやましさ”もあるのではと、牛窪さんは見ている。

「『青い珊瑚礁』の歌詞は、手放しで恋愛を賛美し、『世の中を知らなさすぎるのでは』と思うほど迷いがない。一方、現代の若者は恋愛の現実が見えていて、別れた後のリベンジポルノやストーカーといったリスクまで考えて、恋愛は面倒なものだと躊躇しています。

 例を見ない旋律で、松田聖子さんの透き通った声で歌われる『青い珊瑚礁』を誰もが『かわいい』『ピュア』と称え、社会全体で楽しめる空気感は、厳しい時代を生きるいまの若者が体験したことがないものだと実感します」
 

 7月6日に日本テレビ系列で放送される音楽の祭典『THE MUSIC DAY』で、HANNIの「青い珊瑚礁」が披露された。

(AERA dot.編集部・太田裕子)

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