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 国際線の航空機に乗ったことのある人なら、機内食サービスのときに「ビーフorチキン?」と聞かれたことがあるだろう。同じ水曜22時に「フラジャイル」と「ヒガンバナ」が放送されることがわかったとき、視聴者は「あなたはどちらの肉を食べますか?」と聞かれているような心境だったのではないか。

 それぞれ医療、刑事という連ドラの人気ワンツーを誇るジャンルであり、日ごろよく食べる肉料理に近い。加えて、サラッと見やすい一話完結のスタイル、変人で不愛想な主人公、病院・警察の内部に敵がいるなどの類似点も、今や「おなじみのメニュー」というイメージだ。

 「フラジャイル」は「日陰に回りがちな病理医」、「ヒガンバナ」は「女性だけのチーム」と切り口を変えていたが、視聴者にしてみれば「塩味か赤ワインソースか」という味付けの違い程度。「いつもの牛肉や鶏肉を食べている」という感覚は変わらなかった気がする。

 ともに一度見逃しても問題ない内容だけに、「今週はどちらの肉を食べようかな?」と気分で選んでいたのだろうか。視聴率はほとんど差がないまま推移し、中盤以降はともにひと桁の低空飛行。最終的な平均視聴率も「フラジャイル」が9・8%、「ヒガンバナ」が9・6%と、わずか0・2%の差で「勝者なきフィナーレ」を迎えた。どちらも連ドラとしてのクオリティに問題はなく、見どころもある作品だっただけに、リアルタイム視聴という観点では「ドラマファンを分け合った」印象が強い。2つ合わせれば約20%。そんな簡単な話ではないが、当事者のやるせなさは察するに余りある。

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