那須御用邸敷地内を散策する天皇ご一家。陛下の頭についた蚊を愛子さまが払い「もう大丈夫」と、にっこりする場面もあった=2024年9月12日午後4時37分、栃木県那須町 

 埼玉県に住む小野徳子さん(59)は、ご一家の姿をひと目みようと家族で来た。

 陛下に6月のご訪英についての感想を伝えていると、隣にいる息子も輪に加わりたがった。障害があることを、そっと陛下に伝えた。

 コクンとうなずいた陛下は、小野さんの息子と穏やかに会話を続け、雅子さまにも、

「息子さんなんだって」

 そう、紹介してくれた。

「お子さんは、ひとりですか」

 雅子さまにたずねられ、姉がいると答えた。子どもが障害を持って生まれたのは、自分のせいではと思い詰めた時期もあった。でも、いまは息子がいてくれてよかったと思う、と伝えた。静かに耳をかたむける雅子さまの表情から、共感を示してくれていることがわかった。

 天皇ご一家は、目の前にいる人たちと丁寧に会話を進めてゆく。両陛下に続き、愛子さまが小野さんの目の前で、にっこりとほほ笑んでいる。

ふふっと笑う愛子さま

 ご一家が、「那須どうぶつ王国」でゆったりと過ごしていることは、報道で知っている。タカやワシ、ミミズクといった猛禽類による同王国の「バード・ショー」を紹介した映像に感激したことのある小野さんは、愛子さまもご覧になるのかたずねた。

 愛子さまが、ふふっと小さく笑う。ひと呼吸おいてこう話してくれた。

「山の方から、鳥が飛んでくるんですよね。いいですよ。壮大なスケールで迫力満点。私も行くたびに見ています。ぜひ行ってみてください」

 愛子さまの聡明さが伝わる言葉だったと、小野さんは振り返る。

 しばらくして、1歳の女の子がぐずって泣き出した。雅子さまは、腰をかがめて赤ちゃんに、「暑いしねえ」と声をかけた。

 初秋にもかかわらず30度を優に超える暑さのなか、ご一家は30分にわたり人びとと交流を続けた。両陛下はもちろん、愛子さまも疲れた表情ひとつ浮かべることはなく、乗った車が走り出すまで、凛としたたたずまいとほほ笑みを絶やさなかった。

 (AERA dot.編集部・永井貴子)

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