埼玉県に住む小野徳子さん(59)は、ご一家の姿をひと目みようと家族で来た。
陛下に6月のご訪英についての感想を伝えていると、隣にいる息子も輪に加わりたがった。障害があることを、そっと陛下に伝えた。
コクンとうなずいた陛下は、小野さんの息子と穏やかに会話を続け、雅子さまにも、
「息子さんなんだって」
そう、紹介してくれた。
「お子さんは、ひとりですか」
雅子さまにたずねられ、姉がいると答えた。子どもが障害を持って生まれたのは、自分のせいではと思い詰めた時期もあった。でも、いまは息子がいてくれてよかったと思う、と伝えた。静かに耳をかたむける雅子さまの表情から、共感を示してくれていることがわかった。
天皇ご一家は、目の前にいる人たちと丁寧に会話を進めてゆく。両陛下に続き、愛子さまが小野さんの目の前で、にっこりとほほ笑んでいる。
ふふっと笑う愛子さま
ご一家が、「那須どうぶつ王国」でゆったりと過ごしていることは、報道で知っている。タカやワシ、ミミズクといった猛禽類による同王国の「バード・ショー」を紹介した映像に感激したことのある小野さんは、愛子さまもご覧になるのかたずねた。
愛子さまが、ふふっと小さく笑う。ひと呼吸おいてこう話してくれた。
「山の方から、鳥が飛んでくるんですよね。いいですよ。壮大なスケールで迫力満点。私も行くたびに見ています。ぜひ行ってみてください」
愛子さまの聡明さが伝わる言葉だったと、小野さんは振り返る。
しばらくして、1歳の女の子がぐずって泣き出した。雅子さまは、腰をかがめて赤ちゃんに、「暑いしねえ」と声をかけた。
初秋にもかかわらず30度を優に超える暑さのなか、ご一家は30分にわたり人びとと交流を続けた。両陛下はもちろん、愛子さまも疲れた表情ひとつ浮かべることはなく、乗った車が走り出すまで、凛としたたたずまいとほほ笑みを絶やさなかった。
(AERA dot.編集部・永井貴子)