先天性の「当事者」にどう伝えるか

 難しいのは、先天的な原因で体臭が強い人に、どう伝えるか。

 ある日突然、「事実」を知らされたらどれほどのショックを受けるかは想像にかたくない。石田さんが強調するのは、「くさい」ことを小ばかにしない社会の寛容さと、その問題に寄り添う周囲の姿勢だ。

「体臭を知らされた人は大きなショックを受けて、最悪の場合、職場をやめたり、ひきこもってしまうかもしれません。どうしても伝える必要があるなら、どうしたらそれを改善できるかの対策まで一緒に考えるという、問題に寄り添う姿勢を持って伝えてほしいと思います。手術などの治療をすれば治るものもありますから。改善を命令したり排除するような言い方しかできないなら、伝えてほしくないというのが本音です」

 自分の体臭が不安になった人の7割が「問題なし」だったという結果は、においへの“不寛容さ”の裏返しではないか。石田さんは、かつて「周囲に聞けないし、言い出すこともできない」状況に悩んだひとりとして、そんなことも感じている。

(國府田英之)

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國府田英之

國府田英之

1976年生まれ。全国紙の記者を経て2010年からフリーランスに。週刊誌記者やポータルサイトのニュースデスクなどを転々とする。家族の介護で離職し、しばらく無職で過ごしたのち20年秋からAERAdot.記者に。テーマは「社会」。どんなできごとも社会です。

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