そうした研究者の実績もあわせて認められ、26日には、主催者の国際結核肺疾患予防連合から「名誉会員」の称号を贈られている。これまでの受賞者は、結核に取り組む世界の第一線の医師が大半を占めるから、異例の受賞だ。もちろん、皇族や王族では他に例がない。

 ふだんは「賞を授ける側」なのが、「いただく側」にまわり、さぞ緊張したのではないか。

 紀子さまは24年前に総裁に就任した時、結核に関する詳しい知識は、ほとんどなかったという。その後、結核の予防活動に取り組む各地の婦人会の女性たちや、医師、保健師らと交流する中、知識にもまして彼らの生き方に強いインパクトを受けた。

「私のほうがいつも励ましをいただいている」

 と繰り返し感想を漏らしてきた。

 受賞直後の英語のあいさつでもこうした人々のことに触れ、

「取り組みを進めていくことの重要性について学ぶとともに、この分野に携わることへの励ましをいただいた」

 と改めて感謝をささげた。

 結婚して初めて皇族の一員となったころ、紀子さまの苦労は並大抵ではなかったろう。顔にはなかなか出さないタイプだが、つらいこともあったはずだ。「妻」として、秋篠宮さま(52)が直接言えないこともてきぱきと周囲に言うことで、憎まれ役になったこともあろう。眞子さま(27)、佳子さま(23)、悠仁さまの3人の母としての活動も、忙しかったはずだ。

 そんな中、今回は秋篠宮さまに留守を頼んでの、結婚後初めての単独での海外訪問だった。

 長女の眞子さまはすでに複数回、一人で海外を訪れており、「海外への単独訪問では先輩」の立場。出発前には、

「一人での仕事があっても、いいのではないかしら」

 と眞子さまから励まされたとされ、今回の旅で、紀子さまはさらに自信を深めたに違いない。

 来年は天皇陛下の退位と皇太子さまの即位に伴い、秋篠宮さまは「皇嗣(こうし)」に。紀子さまも「皇嗣妃」となり、新しい未来を切り開く。(朝日新聞社会部・斎藤智子)

※AERA 2018年11月12日号