「結婚・出産後も働き続ける女性が増え、厚生年金の加入期間も30歳以下では今の65歳より10年以上延びるのですが、年金額の分布では月額10万円未満の割合が今の7割弱が30歳では約45%に、20歳でも36%程度にしか減らない見通しです。賃金格差が原因である男女の年金格差も解消される見通しではありませんでした」
第一生命経済研究所研究理事の小川伊知郎氏は、だからこそ若い世代はこの分布推計を活用して、将来の備えをしてほしいと力説する。
「『ねんきん定期便』で送られてくる自分の年金の加入実績をもとに、年金額をネットで簡単に試算できる『年金シミュレーター』を使って試算すれば自分の将来の年金額がある程度わかります。それを今回の分布図にあてはめたりして、仮に同世代の平均より少ないとわかれば、貯蓄・投資を増やすなど自助努力を生活に組み込んでいくのです」
分布推計による個人単位の年金額試算は、今後の財政検証の「定番」になっていくとするのが専門家たちの一致した見方だ。であるならば、国側には試算方法の「進化」を望みたいし、私たち受け手の方は活用法を磨いていくべきだろう。(編集部・首藤由之)
※AERA 2024年9月16日号